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中懐(ちうくわい)好(よく)《振り仮名:逐_二孤雲_一去|こうんをおふてさり》 外物(ぐわいぶつ)相逢(あひあふて)満月(まんげつを)迎(むかふ)
此地(このち)《振り仮名:雖_三身無_二撿繫_一|みにけんけいなしといへども》 何為(なんそれぞ)寸歩(すんほも)《振り仮名:不_二出行_一|しゆつかうせざる》
就中(なかんづく)都府楼(とふろう)観音寺(くわんおんじ)の一 聯(れん)は。唐(とう)の白楽天(はくらくてん)が。遺愛寺(いあいじの)鐘(かねは)《振り仮名:欹_レ枕|まくらをかたげて》聴(きく)香炉(かうろ)
峰(ほうの)雪(ゆきは)《振り仮名:撥_レ簾|れんをかゝげて》看(みる)と賦(ふ)せし対句(ついく)にも勝(まさ)れりと。其頃(そのころ)の博士(はかせ)も感賞(かんせう)せしとかや
斯(かく)て配所(はいしよ)に幽居(ゆうきよ)し給ふ所(ところ)に。其年(そのとし)の冬(ふゆ)の首(はじめ)庭前(ていぜん)に一 夜(や)の内(うち)に一株(ひともと)の楳樹(むめのき)生出(おひいで)
たり。辰音(たつおと)春彦(はるひこ)等(ら)庭(には)を浄(きよ)むる奴僕(しもべ)の斯(かく)と告(つげ)けるに依(よつ)て。両人(りようにん)訝(いぶか)り打連立(うちつれだつ)て
庭前(ていぜん)へいたり見るに。実(げに)も昨日(きのふ)まで無(なか)りし梅樹(むめのき)兼(かね)てより生(はへ)し如(ごと)く更(さら)に今 植(うえ)し
樹(き)とは見えず。已(すで)に毎枝(えだごと)に莟(つぼみ)を生(せう)じたり。辰音(たつおと)春彦(はるひこ)奇異(きい)の思ひをなし。菅公(かんこう)
に斯(かく)と言上(まうしあげ)ければ。公(こう)も不審(ふしんし)給ひて見(み)給ふに両人(りようにん)の詞(ことば)のごとくなれば不測(ふしぎ)に思召(おぼしめし)
熟然(つら〳〵)と見給ふに将是(まさしく)都(みやこ)の紅梅殿(かうばいどの)に植(うえ)給ひし御 愛樹(あいじゆ)の紅梅なりければ
膝(ひざ)を拍(うつ)て歎息(たんそく)し給ひ。是(こ)は我(われ)都(みやこ)にて多年(たねん)愛(あい)せし楳樹(うめのき)なり。是(これ)に就(つい)て