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你(なんじ)は辰音(たつおと)と倶(とも)に都(みやこ)へ帰(かへ)り。残(のこ)る女(むすめ)どもの介抱(かいほう)せよ。且(かつ)此(この)一 綴(とぢ)は予(よ)が配所(はいしよ)にて唫(ぎん)ぜし詩(し)
文(ぶん)なり持(もち)かへりて中納言(ちうなごん)長谷雄(はせを)に達(たつ)せよ。即(すなは)ち長谷雄(はせを)へ遣(つか)はす消息(せうそく)。入道(にふどう)し給ひ
し斉世(ときよ)の宮(みや)大納言(だいなごん)忠平(たゞひら)へ呈(てい)する書翰(しよかん)をも封中(ふうちう)に籠(こめ)たりとて。差出(さしいだ)し給ひければ
忠臣(たゞおみ)も辰音(たつおと)も大いに駭(おどろ)き。忠臣(たゞおみ)先(まづ)申けるは。御掟(ごでう)反(かへ)し奉り候は恐(おそれ)多(おほ)く候へども。御台(みだい)
所(どころ)御逝去(ごせいきよ)まし〳〵けるゆへ。姫君(ひめぎみ)達(たち)は御親族(ごしんぞく)方(がた)へ預置(あづけおき)某(それがし)は君(きみ)の御先途(ごせんど)を見届(みとゞけ)
奉らんため下向(げかう)仕(つかまつ)り候へば。此(この)御使(おんつかひ)は余人(よじん)に命付(あふせつけ)られ某(それがし)は御 膝下(ひざもと)にて召使(めしつかは)せ給ふべしと
願(ねがふ)にぞ。辰音(たつおと)も言(ことば)を発(はつ)し。某(それがし)身(み)不肖(ふせう)に候へども。君(きみ)都(みやこ)を出(いで)給ひし時(とき)より随従(おんとも)仕(つかまつ)り今(こん)
日(にち)まで仕(つか)へをり候に。君(きみ)先頃(せんけう)より今(いま)以(もつ)て御 不例(ふれい)にわたらせ給ふを見捨(みすて)奉り。争(いかで)か都(みやこ)へ
帰(かへ)り候べき。只(たゞ)此儘(このまゝ)にて召使(めしつか)はせ給へと歎(なげ)き願(ねがひ)けれども。敢(あへ)て許(ゆる)し玉はず。你(なんじ)們(ら)が申 処(ところ)理(ことはり)に
似(に)たれども。予(よ)が病(やまひ)も今は稍(やゝ)怠(おこた)りて治(ぢ)するに程(ほど)あらじ。閑暇(かんか)の配所(はいしよ)給仕(きうじ)は春彦(はるひこ)一人にて
事(こと)足(たり)なん。数多(おほく)の女(むすめ)ども母(はゝ)を亡(うしな)ひて便(たより)なくぞ思(おも)ふらめ。されば忠臣(たゞおみ)一人にては事(こと)不足(たらざる)べし