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までは堅(かた)く辞(じ)して下山(げさん)仕(つかまつ)るまじ。されども普天(ふてん)の下(した)王土(わうど)に非(あらざ)るはなく卒土(そつと)の賓(ひん)王(わう)の民(たみ)に非(あらざ)るは
なし。【注】且(そのうへ)我(わが)山は王城(わうぜう)鎮護(ちんご)の為(ため)に立置(たておか)るゝ所(ところ)なれば。勅使(ちよくし)三度(さんど)に及(およ)びては召(めし)に応(おう)ぜざる
事 能(あた)はず。斯程(かほど)の理(り)は凡庸(ぼんよう)の徒(ともから)も弁(わきまへ)知(しり)候べし。況(いはん)や貴卿(きけい)に於(おいて)おやと仰(あふせ)けるにぞ。菅公(かんこう)
再(ふたゝ)び仰(あふせ)らるゝ御 言(ことば)なく。勃然(ぼつぜん)として気色(けしき)を損(そん)ぜられ。菓子台(くわしだい)の柘榴(ざくろ)を採(とつ)て噛(かみ)くだき給ひ
妻戸(つまど)に。はつと吐(はき)かけ給へば。柘榴(ざくろ)は忽(たちま)ち猛火(みやうくは)となり。妻戸(つまど)に燃付(もえつき)焰々(ゑん〳〵)と燃上(もえあが)りけるを。僧(そう)
正(ぜう)は公然(こうぜん)として騒(さは)ぎ玉はず。手(て)に灑水(しやすい)の印(いん)を結(むす)び給ふと等(ひとし)く。今まで燃立(もえたち)し妻戸(つまど)の火(ひ)
消然(せうぜん)として消(きえ)。其(その)煙(けふり)に紛(まぎ)れ菅公(かんこう)の姿(すがた)消失(きえうせ)給ふと思(おも)ひ給へば俄然(がぜん)として御 眼覚(めさめ)是(これ)
一場(ぢよう)の夢(ゆめ)にぞ有(あり)ける。僧正(そうぜう)奇異(きい)の思(おもひ)をなし給ひ。我(われ)菅丞相(かんしやう〴〵)を追慕(つひぼ)する心 深(ふか)きゆへ
かゝる奇怪(きくわい)の夢(ゆめ)を見たり是(これ)思夢(しむ)なるべし。然(しかれ)ども内裏(だいり)の天災(てんさい)を示(しめ)し下山(げさん)を止(とめ)
られしを以(もつ)て考(かんがふ)ればもし実夢(じつむ)にやと。虚実(きよじつ)両端(りようたん)を定(さだ)めかね玉ひ又 加持(かじ)をぞ修(しゆ)せられける
貝原(かいばら)先生(せんせい)の著(あらは)されし太宰府天満宮故実記(だざいふてんまんぐうこじつき)に曰。菅公(かんこう)の霊(れい)睿山(ゑいさん)の法性坊(ほふせうばう)の許(もと)
【注 詩経、小雅に「率土之浜、莫_レ非_二王臣_一」とあるによるか】