Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

- 翻刻

 - ページ 496

ページ: 496

翻刻

し候べし此旨(このむね)回奏(くわいそう)して玉はり候へと申されければ。勅使(ちよくし)推反(おしかへ)し。御所労(ごしよらう)と候へば一 応(おう)の御 辞退(じたい)さる事に候へども。今度(こんど)の天災(てんさい)は尋常(よのつね)の義(ぎ)ならず。筑紫(つくし)にて薨(かう)ぜられし菅公(かんこう) の祟(たゝり)【崇は誤】なれば。自他(じた)とも僧正(そうぜう)を伴(ともな)ひかへれよとの勅詔(みことのり)に候。御 労煩(らうはん)ながら是非(ぜひ)ともに 御 参内(さんだい)あれと乞(こは)れけるに。僧正(そうぜう)猶(なを)辞(じ)して申さるゝやう。菅公(かんこう)の祟(たゝり)【崇は誤】にもあれ。天帝(てんてい)の咎(とがめ)にも あれ。拙僧(せつそう)が修法(しゆほふ)にて止(やむ)べくば。内裏(だいり)にて修(しゆ)するも当山(とうざん)にて修(しゆ)するも同(おな)じ理(り)なり 先(まづ)〱(〳〵)御 還(かへり)有(あつ)て可然(しかるべく)奏聞(そうもん)し給へとて。敢(あへ)て下山(げさん)すべき体(てい)見え玉はざれば。勅使(ちよくし)惘(あきれ)【旁の「岡」は誤】はて 是(こ)は奈何(いかゞ)すべきと当惑(とうわく)ある内(うち)。又二 番手(ばんて)の勅使(ちよくし)混沾(ひたぬれ)に成(なつ)て駈着(かけつけ)参内(さんだい)を促(うなが)す事 以前(いぜん)の如(ごと)し。されども僧正(そうぜう)先(さき)のごとく曰(のたまひ)て下山(けさん)を固辞(こじ)せらるゝ内(うち)。間(ま)もなく三 番手(ばんて)の勅(ちよく) 使(し)息(いき)を切(きつ)て蒐着(かけつけ)参内(さんだい)を乞(こふ)事 頻(しきり)なり。僧正(そうぜう)も勅使(ちよくし)三 度(ど)に及(およ)ぶ上は辞(じ)するに詞(ことば)なく 此上(このうへ)はとて先(まづ)三人の勅使(ちよくし)を先(さき)に立(たて)其身(そのみ)は車(くるま)に乗(のつ)て睿岳(ゑいがく)を押下(おしくだ)らせ。鴨川(かもがは)まで一 散(さん)に 押行(おしゆか)し給ひけるに。早(はや)鴨川(かもがは)は洪水(かうずい)漲(みなぎ)り。水勢(すいせい)岩(いは)をも流(なが)すばかりにて。白浪(しらなみ)立(たち)し有様(ありさま)