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回(まは)られける。是(これ)真(まこと)の菅公(かんこう)の霊(れい)の祟(たゝり)【崇は誤】をなし給ふにはあらず自身(みづから)我(われ)を求(もと)めし奇病(きびやう)なり
其故(そのゆへ)は去年(きよねん)大内(おほうち)雷災(らいさい)の砌(みきり)一心(いつしん)に菅公(かんこう)の祟(たゝり)【崇は誤】なりと思(おも)ひこみ恐怖(きやうふ)の念(ねん)骨髄(こつずい)に徴(とふ)
り。其後(そのゝち)は昼夜(ちうや)菅霊(かんれい)を怕(おそ)るゝ念(ねん)止(やむ)時(とき)なく。遂(つひ)に奇病(きびやう)と成(なり)けるなり。彼(かの)盃中(はいちう)に蛇(じや)有(あり)と
思(おも)ひしより心(むね)に病(やまひ)を生(しやう)じ。角弓(かくきう)の蒔絵(まきゑ)の影(かげ)なりと聞(きい)て宿病(しゆくびやう)忽(たちま)ち愈(いえ)しと同(おな)じ理(り)也(なり)
然(しかれ)ども自身(みづから)も想(おもひ)より生(しやう)ぜし病(やまひ)なるを覚(さとら)ず。増(まし)て余人(よしん)は猶(なを)以(もつ)て菅公(かんこう)の祟(たゝり)【崇は誤】なりと思(おも)ひ
詰(つめ)。此上(このうへ)は当時(とうじ)無双(ぶそう)の験者(げんじや)と聞(きこ)えし浄蔵貴所(じやうざうきしよ)を請(しやう)じて加持(かじ)させ玉はゞ怨霊(おんれう)の退(たい)
散(さん)する事も有(ある)べしとて。浄蔵貴所(じやうざうきしよ)を招(まね)き請(しやう)じ。左府(さふ)の奇病(きびやう)平愈(へいゆ)の加持(かし)をぞ修(しゆ)
せしめける。此(この)浄蔵貴所(じやうざうきしよ)と申は三善清行(みよしきよゆき)の息男(そくなん)にて。幼稚(ようち)の時(とき)より仏法(ふつほふ)に心を傾(かたふ)け
出家(しゆつけ)して普(あまね)く経論(けうろん)を学(まな)び究(きは)め行徳(ぎやうとく)衆(しゆう)に勝(すぐ)れ。一年(ひとゝせ)都(みやこ)八坂(やさか)の大 塔(とふ)歪(ゆがみ)ければ浄(じやう)
蔵(ざう)毘沙門天(びしやもんでん)の法(ほふ)を修(しゆ)して是(これ)を祈(いの)られけるに。一 夜(や)の内(うち)に搭(とふ)の歪(ゆがみ)整(なを)りけるゆへ世人(せじん)挙(こぞつ)
て其(その)法力(ほふりき)を感賞(かんせう)しける。かゝる名僧(めいそう)の丹誠(たんせい)を抽(ぬきんで)て加持(かじ)せられけるゆへ。大臣(おとゞ)の狂病(けうぶやう)