Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 502

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時(とき)に年齢(ねんれい)三十九才とぞ聞(きこ)えし。御台(みだい)側室(そばめ)の悲歎(ひたん)はいへば更(さら)なり。子息(しそく)八条大将(はちでうのだいせう)保忠(やすたゞ) 同 中納言(ちうなごん)敦忠(あつたゞ)其余の一 族(ぞく)縁者(えんじや)の人々(ひと〴〵)悔(くや)み歎(なげ)けども帰(かへ)るべき道にあらざれば。泣々(なく〳〵)屍(むくろ)を 棺(ひつぎ)に収(おさ)め送葬(そうさう)の営(いとなみ)を執行(とりおこな)ひ一 堆(たい)の塚(つか)の主(ぬし)とぞなしにける。斯(かく)て初(しよ)七日にも成ければ。御(み) 台所(だいどころ)を先とし子息(しそく)保忠(やすたゞ)。敦忠(あつたゞ)其余(そのほか)の女房 達(たち)雑掌(ざつせう)一門の人々にいたる迄(まで)廟参(べうさん)【庿は古字】せら れけるに。墓(はか)の上(うへ)に五尺余の青蛇(あをへび)蟠(わだかま)り居て人々の面(おもて)をながめうなづき咲(わら)ふ体(てい)なりけれ ば。女流(ぢよりう)の輩(ともがら)は。あなやと玉(たま)ぎりて袖(そで)を覆(おほふ)て逃出(にげいづ)るもあり伏転(ふしまろぶ)もあり。保忠(やすたゞ)敦忠(あつたゞ)以(い) 下(げ)も大いに駭(おどろ)き惘(あきれ)【旁が「岡」は誤】惑(まど)へり。只(たゞ)時平(しへい)の舎弟(しやてい)大納言(だいなごん)忠平(たゞひら)のみ勇気(ゆうき)ある人にて些(ちつと)も 動(どう)ぜず武士(ぶし)に指揮(さしづ)して蛇(へび)を取捨(とりすて)させんとせられけるに。蛇(へび)は己(おのれ)と這去(はひさつ)て更(さら)に行方(ゆきがた)をしら ずなりけり。是(これ)に依(よつ)て各(おの〳〵)廟拝(べうはい)【庿は古字】し終(おは)り館(やかた)【舘は俗字】へ帰(かへ)られけるが。二七日に及(およ)びて又 皆(みな)打揃(うちそろひ)廟参(べうさん)【庿は古字】 せられけるに。此度(このたび)も墓上(はかのうへ)に蛇(へび)の在事(あること)前(さき)のごとく。しかも先日(せんじつ)よりは稍(やゝ)長大(ちようだい)になりて蟠(わだかま)り 居(ゐ)けるにぞ。女性(によせう)の面々(めん〳〵)は以前(いぜん)に倍(ばい)して駭(おどろ)き怕(おそ)れ。此後(このゝち)は廟参(べうさん)【庿は古字】する女性(によせう)はなかりけり