Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 507

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さへ希代(きたい)の大 変(へん)かなと怖(おそ)るゝ所(ところ)に同年(どうねん)六月 初旬(はじめごろ)より大雨(たいう)降続(ふりつゞ)き白昼(はくちう)も黄(たそ) 昏(かれ)の如(ごと)く。市街(まち〳〵)はいまだ春の火災(くわさい)に家造(やづくり)も間粗(まばら)の仮住居(かりずまい)なれば。雨(あめ)の不洩(もらざる)家(いへ)も なく。大いに困(こま)り果(はて)けるに稍(よふや)く中旬(ちうじゆん)後(ご)に雨(あめ)止(やみ)天(そら)霽(はれ)けるゆへ少し心を安(やすん)ずる間もなく 忽(たちま)ち賀茂 桂(かつら)等(とう)の大川より洪水(かうずい)溢(あぶれ)て。洛中(らくちう)水の深(ふか)き事八尺 余(よ)に及(およ)び水 勢(せい)家(いへ) を漂(たゞよ)はし材木(ざいもく)竹 等(など)を押流(おしなが)し。水の来る事いふ許(ばかり)なく疾(はや)かりければ。牛馬(ぎうば)雞犬(けいけん)は いへば更(さら)なり。老人(らうじん)女 小児(せうに)の們(ともがら)は水に漂(たゞよ)ひ流(なが)れ溺死(できし)する者(もの)何(いく)百千の数(かづ)をしらず 野武士(のぶし)強盗(がうどう)は混雑(こんざつ)騒動(そうどふ)の紛(まぎれ)に乗(じやう)じ。金銀(きん〴〵)財宝(ざいほう)衣服(いふく)等(とう)を奪(うば)ひ掠(かすめ)て逃走(にげはし)り 宦(おほやけ)よりはさる狼藉(らうぜき)をも防(ふせ)ぎ給ふ暇(いとま)もなく。其(その)錯乱(さくらん)筆紙に尽し難(がた)し。適(たま〳〵)水に流(なが)れ ざる家々(いへ〳〵)も床(ゆか)より上へ四五尺も水 築(つき)たれば。屏風(べうぶ)襖(ふすま)も沾(ぬれ)爛(たゞ)れ障子(せうじ)も壁(かべ)も骨(ほね) ばかりと成(なり)。家内の男女は屋根(やね)の上へ逃上(にげあが)り炎(えん)天に照蒸(てりむさ)れて大いに苦(くるし)み。暑(しよ)に中(あたり) て疾(やまひ)を発(はつ)するも少(すくな)からず。春の火災(くわさい)といひ又 此(この)水難(すいなん)に遭(あふ)事前代 未聞(みもん)凶変(けうへん)かな