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納(おさ)めしめ給ひけれども。猶(なを)世上(せじやう)穏(おだやか)か【衍】ならざりければ。延喜(えんぎ)二十一年に空海和尚(くうかいおしやう)に弘法(かうぼふ)大
師(し)と謚(おくりな)を賜(たまは)り年号(ねんがう)も延長(えんてう)元年と改元(かいげん)し給ひけり然(しかる)に同年(どうねん)三月 洛中(らくちう)に大地震(おほぢしん)
し就中(なかんづく)五 条(でう)より下は南北(なんぼく)三十 余町(よてう)東西(とうざい)二十 余町(よてう)が間(あひだ)人家(じんか)を揺崩(ゆりくづ)し。神社(しんじや)仏閣(ぶつかく)を
傾覆(けいふく)せしめける。按(あんづ)るに是(これ)先年(せんねん)の火災(くわさい)の時(とき)焼残(やけのこり)し所(ところ)なるも不思議(ふしぎ)なり。其(その)物音(ものおと)の
凄(すさま)じき事 世界(せかい)も滅却(めつきやく)するかと疑(うたが)はれ。老人(らうじん)小児(せうに)婦女(ふぢよ)の逃後(にげおくれ)し輩(ともがら)は圧(おし)に撃(うた)れ棟柱(むなぎはしら)
の倒(たほれ)かゝるに中(あたり)て死亡(しばう)する者 凡(およそ)三千 余(よ)人に及(およ)び少々(せう〳〵)の疵(きず)を蒙(かうむ)る者は幾万人(いくまんにん)といふ際限(さいげん)
なし。是(これ)も菅丞相(かんしやう〴〵)の怨霊(おんりやう)の祟(たゝり)【崇は誤】なりと言触(いひふら)しければ。主上(しゆぜう)また勅使(ちよくし)を筑紫(つくし)太宰府(だざいふ)
へ下(くだ)し給ひ菅廟(かんべう)を新(あらた)に修理(しゆり)させ給ひ。八月四日 初(はじめ)て祭礼(さいれい)を執行(とりおこなは)しめ給ひて。此(この)以後(いご)例(れい)
年(ねん)懈怠(けだい)なく祭礼(さいれい)を執行(とりおこなふ)べきよし勅詔(ちよくぜう)ありけるゆへ。此年(このとし)を始(はじめ)として例年(れいねん)怠(おこた)らず執(とり)
行(おこな)はれける。時(とき)に勅使(ちよくし)神殿(しんでん)に昇(のぼり)て拝礼(はいれい)し敬(つゝし)んて宣命(せんみやう)を読上(よみあげ)られけるに。其夜(そのよ)の中(うち)に社(しや)
前(ぜん)に一 面(めん)の瑞石(ずいせき)現(あらは)れ。面(おもて)玉盤(ぎよくばん)のごとく石面(せきめん)に七 言絶句(ごんぜつく)の詩文字(しもんじ)鮮(あざやか)に見えたり。社司(みやづかさ)大