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神(じん)の御 託宣(たくせん)の始終(はじめをはり)を奏聞(そうもん)しければ。帝(みかど)睿感(ゑいかん)まし〳〵。右近(うこん)の馬場(ばゝ)に御社(みやしろ)を御 造(ぞう)
営(えい)在(あつ)て綾子(あやこ)が家(いへ)の小社(ほこら)を遷(うつ)【迁は俗字】し奉り玉へり。今の北野(きたの)の天満宮(てんまんぐう)是(これ)なり。彼(かの)一 夜(や)の中(うち)に
千 本(ぼん)の松(まつ)生(しやう)ぜし地(ち)を今小 千本(せんぼん)と謂(いへ)り。又 浪速(なには)天満(てんま)の天神(てんじん)の御社(みやしろ)も村上天皇(むらかみてんわう)の
天暦(てんりやく)年中(ねんぢう)菅神(かんじん)の御 神託(しんたく)に依(よつ)て社(やしろ)を御 造営(ぞうゑい)あり。河州(かしう)道明寺(どうみやうじ)の天満宮(てんまんぐう)も同
じ頃(ころ)御社(みやしろ)を建(たて)られ其他(そのほか)諸国(しよこく)津々(つゝ)浦々(うら〳〵)まで此神(このかみ)を崇(あがめ)祭(まつら)ざる所もなく。神威(しんい)
の灼然(いやちこ)なる事 誠(まこと)に日(ひゞ)に新(あらた)に日々(ひゞ〳〵)に新(あらた)にして上(かみ)天子(てんし)より下(しも)億兆(おくてう)の庶民(しよみん)まで尊信(そんしん)し
奉らざるはなく。祈願(きぐわん)として成就(じやうじゆ)せずといふ事なし。仰(あふ)くべし尊(とうと)むべし
去程(さるほど)に勅使(ちよくし)は太宰府(だざいふ)を立(たつ)て帰洛(きらく)し。参内(さんだい)して太宰府(だざいふ)の神前(しんぜん)に磐石(ばんせき)の詩(し)出(しゆつ)
現(げん)せし奇瑞(きずい)を奏聞(そうもん)せられければ。帝(みかど)睿感(ゑいかん)斜(なゝめ)ならず思召(おぼしめさ)れ。倍(ます〳〵)菅神(かんじん)を御 信仰(しんかう)
在(まし〳〵)けり。斯(かく)て後(のち)は天神(てんじん)地祇(ぢぎ)も怒(いかり)を和(やはら)げ給ひけん世上(せじやう)穏(おだやか)になりければ。上下 心(むね)を安(やす)
んじけり。然(しかる)に延長(えんてう)三年六月 主上(しゆじやう)御 疱瘡(ほうさう)を患(やま)せ給ひければ。諸王(しよわう)公卿(こうけい)大いに