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の頃(ころ)より父母(ふぼ)の家(いへ)を出(いで)て悪徒(あくと)の群(むれ)に入あらゆる悪業(あくげう)をなしけるが強力(がうりき)なる上(うへ)弓(きう)
馬(ば)打物(うちもの)の業(わざ)にも達(たつ)しければ。悪徒(あくと)ども八郎に伏従(ふくじふ)する者 多(おほ)く。八郎 遂(つひ)に強盗(がうどう)の
巨魁(かしら)となり。諸方(しよはう)の富家(ふか)へ推入(おしいつ)て金銀(きん〴〵)財宝(ざいほう)を奪掠(ばひかす)め。深山(しんざん)に巣穴(すみか)を構(かまへ)て
住居(ぢうきよ)しける。其名(そのな)隣国(りんごく)まで隠(かくれ)なかりければ。伊治呰麻呂(いちのしまろ)安達(あだち)を度々(たび〳〵)味方(みかた)に招(まね)け
ども八郎 是(これ)に応(おふ)ぜず。只(たゞ)刧盗(がうどう)を事(わざ)として世(よ)を恣(ほしいまゝ)に送(おく)りけるに。一時(あるとき)配下(てした)の賊徒(ぞくと)を
将(ひきつれ)て信夫郡(しのぶごほり)山村(やまむら)の郷(さと)なる豪民(がうみん)の宅(たく)へ押入(おしいり)けるに。此家(このや)の主(あるじ)は所(ところ)の吏官(だいくわん)の縁者(えんじや)
なりけるゆへ其方(そのかた)へ人を走(はしら)せ盗賊(とうぞく)の押入(おしいつ)たる由(よし)を告(つげ)ければ。吏官(だいくわん)即時(そくじ)に下吏(したやくにん)及(およ)び村(むら)
の腕立(うでだて)を好(この)む若者(わかもの)大 勢(ぜい)駆集(かりあつめ)て駈着(かけつけ)折(をり)しも十五 夜(や)にて月(つき)明(あきらか)なれば諸人(しよにん)に下知(げぢ)
して盗賊(とうぞく)を追払(おつはら)はんとしけるに。安達(あだち)八郎は小高(こだか)き所(ところ)に床机(しやうぎ)を立(たて)て腰(こし)打(うち)かけ螺(ほら)
を吹(ふか)せ太鼓(たいこ)を打(うた)せ。其身(そのみ)は採(ざい)を揮(ふつ)て小賊(せうぞく)に令(げぢ)を伝(つたふ)る事 恰(あたか)も老煉(らうれん)の軍師(ぐんし)の士(し)
卒(そつ)を指指(しき)【ママ】するに異(こと)ならず進退(しんたい)よく法(のり)に合(かなひ)て間(ま)に髪(はつ)を容(いれ)ざれば吏官(だいくわん)の手(て)の