Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 56

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者(もの)《振り仮名:散〱|さん〴〵》に捲(まく)り立(たて)られ。這々(はふ〳〵)の体(てい)にて逃退(にげしりぞ)く内(うち)に八郎は十 分(ぶん)に財宝(ざいほう)を奪取(ばひとり)一 声(せい)の 螺(かい)を吹鳴(ふきならす)を相図(あひづ)として群賊(ぐんぞく)を班(まど)め徐々(しづ〳〵)と引取(ひきとつ)て己(おの)が栖(すみか)へ帰(かへ)りけるは。誠(まこと)に世(よ) に希(まれ)なる強盗(がうどう)なりけり。茲(こゝ)に奥州(おうしう)の国府(こくふ)に近(ち▢)き所(ところ)に観音寺(くわんおんじ)と号(がう)する梵(て) 宇(ら)有(あり)けるが其(その)住侶(ぢうりよ)を瑞雲禅師(ずいうんぜんじ)と呼(よび)て道徳(どうとく)高(たか)き僧(そう)なれば諸人(しよにん)信仰(しんかう)し。藤(ふぢ) 原継縄(はらのつぐなは)も在陣中(ざいぢんちう)折〱(をり〳〵)観音寺(くわんおんじ)へ参詣(さんけい)し。瑞雲禅師(ずいうんぜんじ)の教化(きやうけ)を聞(きゝ)深(ふか)く尊信(そんしん) せられけり。然(しかる)に瑞雲和尚(ずいうんおしやう)一夜(あるよ)書見(しよけん)して居(ゐ)られけるに。一個(いちにん)の大漢(おほをのこ)入来(いりきた)り和尚(おしやう)に向(むか) ひ礼(れい)をなし。明日(めうにち)は某(それがし)が亡父(ぼうふ)の二十五 回忌(くわいき)の忌日(きにち)に当(あたり)候へば。何卒(なにとぞ)御 弔(とふらひ)【吊は俗字】に預(あづか)りたしと て従者(とも)に持(もた)せたる裹(つゝみ)とり寄(よせ)十 両(りよう)許(ばかり)の砂金(しやきん)と絹布(けんふ)五 端(たん)を布施物(ふせもつ)にとてさし 出(いだ)しければ和尚(おせう)是(これ)を見て心中(しんちう)に。此男(このをとこ)の風体(ふうてい)にて斯(かく)過分(くわぶん)の布施(ふせ)を引(ひく)は其意(そのい)を 得(え)ず。もし盗賊(とうぞく)などにやと疑(うたが)ひながら色(いろ)にも見(あらは)さず。其(それ)はいと殊勝(しゆしやう)なる事かな。僧(そう) の役(やく)なれば弔(とふらひ)て進(しん)ずべし。但(たゞ)し亡者(もうじや)の法名(ほふめう)は何(なに)と影向(えかう)し。施主(せしゆ)の名(な)は何(なに)と記(しる)すべき