Gallicaの日本資料を翻刻!

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やと問(とは)れけるに。否(いな)亡父(ぼうふ)の法名(ほふめう)を某(それがし)は知(しり)候はず。子細(しさい)有(あつ)て若年(じやくねん)の頃(ころ)父母(ふぼ)の家(いへ)を出(いで)て 其(その)死期(しご)をも不知(しらず)こ今年(ことし)二十五年の年忌(ねんき)に当(あた)るまで。いまだ亡父母(なきふぼ)の冥福(めうふく)を弔(とふら)【吊は俗字】 ひし事も候はず然(しかれ)ども星霜(せいさう)押移(おしうつ)り身(み)も初老(しよらう)の齢(よはひ)に及(およぶ)につき。父母(ふぼ)の恩義(おんぎ)を 思(おも)ひ。今までの不孝(ふかう)は悔(くひ)て反(かへら)ず。せめて其(その)年忌(ねんき)を弔(とむら)はんため。和尚(おせう)の高徳(かうとく)を聞伝(きゝつたへ) 今夜(こんや)御 頼(たのみ)申さんため推参(すいさん)し候なりと語(かたり)ける。禅師(ぜんじ)聞(きい)て。然(さら)ば御 身(み)の名(な)計(ばかり)なり とも度帖(どてう)に記(しる)し申さばやと言(いは)れければ大漢(おほおのこ)暫時(しばらく)思惟(しあん)し。さらば安達謀(あだちなにがし)と記(しる) し給(たま)はるべしと言(いひ)けるにぞ。禅師(ぜんじ)。されば社(こそ)凡庸(たゞもの)ならじと思(おもい)しに果(はた)して国中(こくちう)に隠(かく)れ なき劫盗(がうどう)安達(あだち)八郎にて有(あり)けりと覚(さとり)ながら左(さ)あらぬ体(てい)にて施物(せもつ)を収(おさ)め本堂(ほんどう)へ 伴(ともな)ひ悃(ねんご)ろに経(きやう)を読誦(どくじゆ)し弔(とむら)ひの仏事(ぶつじ)終(をは)りて後(のち)。方丈(はうぜう)へ請(しやう)じて湯漬(ゆづけ)を進(すゝ)めなど し談話(だんわ)の序(ついで)に禅師(ぜんじ)安達(あだち)に向(むか)ひ。貧道(ひんどう)は出家(しゆつけ)の義(ぎ)なれば万事(ばんじ)心 置(おき)なく物語(ものがた)り 給へ御 身(み)の風体(ふうてい)武家(ぶけ)とも見えず。市人(てうにん)農民(ひやくせう)とは尚(なを)思(おも)はれず由(よし)ある方(かた)にこそ。今は