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仕出(しいだ)したる事もなく攻(せめ)■(あぐ)【「䜑」或は「𦗂ヵ」 注】んで見えたりけり。偖(さて)また搦手(からめて)へ向(むかひ)し古佐美(こさみ)継縄(つぐなは)が
勢(せい)も。五百 騎(き)七百 騎(き)番手(ばんて)を定(さだ)め喊(とき)を発(つくつ)て攻寄(せめよせ)けれども。安達(あだち)八郎 松前(まつまへ)の
荒鰐(あらわに)木石(ぼくせき)を投(なげ)矢(や)を射下(いおろ)して敵(てき)を防(ふせ)ぐ事 大手(おほて)と等(ひとし)く寄兵(よせて)疲(つか)るれば伐(うつ)て出(いで)
て駈落(かけおと)し。敵(てき)退(しりぞ)けば長追(ながおひ)せず柵(さく)へ引(ひき)とり城門(きど)を固(かため)て守(まも)りけるゆへ。此手(このて)も京軍(きやうぐん)
手負(ておひ)死亡(しぼう)の者のみ多(おほ)く敢(あへ)て攻入(せめいる)事 能(あた)はず猶予(ためらふ)て在(あり)けるに申剋(さるのこく)過(すぐ)る頃(ころ)
忽(たちま)ち呰麻呂(しまろ)が柵(さく)の内(うち)に黒煙(くろけむ)り蝸(うづ)巻上(まきあが)り火(ひ)の手(て)起(おこ)りて柵中(さくちう)に騒動(そうどふ)の声(こゑ)大(おほい)
に聞(きこ)えけるにぞ。搦手(からめて)の大将(たいしやう)継縄(つぐなは)大 音(おん)に須波(すは)攻入(せめいれ)よと下知(げぢ)しければ一千五百 騎(き)の
寄兵(よせて)一斉(いつせい)に喊(とき)を発(つくつ)て攻登(せめのぼる)に賊兵(ぞくへい)防(ふせが)んともせず却(かへつ)て城門(きど)を開(ひら)きけるゆへ
官軍(くわんぐん)潮(うしほ)の湧(わく)が如(ごと)く攻込(せめこみ)ける。賊軍(ぞくぐん)は俄(にはか)の出火(しゆつくわ)に駭(おどろ)き防(ふせ)ぎ消(けさ)んと騒(さは)ぐ内(うち)に早(はや)
敵勢(てきせい)攻入(せめいる)にぞ倍(ます〳〵)駭(おどろ)き。偖(さて)は反忠(かへりちう)の者 有(あつ)て敵(てき)を引入(ひきいれ)たるぞと騒立(さはぎたち)周章(しうせう)転倒(てんどう)
して敵(てき)を防(ふせが)んとする者なく煙(けむり)に噦(むせ)火(ひ)に燋(やか)れて狼狽(うろたへ)惑(まどふ)を京軍(きやうぐん)撫切(なできり)に切(きつ)て
【注 国立国会図書館デジタルコレクション『扶桑皇統記』版本は「捲」と記す。】