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先帝(せんてい)格別(かくべつ)の仁恕(じんしよ)を以(もつ)て大赦(だいしや)を行(おこな)ひ給ひし砌(みぎり)川継(かはつぐ)母子(ぼし)が罪(つみ)を赦(ゆる)して召還(めしかへ)し玉
ひしに。其(その)天恩(てんおん)を忘却(ぼうきやく)し。今般(こんはん)また隠謀(いんばう)を企(くはだて)朕(ちん)に寇(あだ)せんとせし条(でう)重々(ぢう〳〵)の罪科(ざいくは)
軽(かる)からず。急度(きつと)厳科(げんくわ)に行(おこな)ふべき者なれども。先帝(せんてい)崩御(ほうぎよ)在(ましま)しいまだ陵(みさゝき)の土(つち)乾(かはか)ず
朕(ちん)また哀戚(あいせき)に堪(たへ)ず諒闇(りようあん)に籠(こも)る折(をり)なれば死刑(しけい)の沙汰(さた)をなすに忍(しの)びず。依(よつ)て川(かは)
継(つぐ)が死罪(しざい)一 等(とう)を宥(なだ)め伊豆国(いづのくに)へ流罪(るざい)に処(しよ)すべし。其母(そのはゝ)不破内親王(ふはのないしんわう)は女の身(み)にて
一 度(ど)ならず二 度(ど)まで川継(かはつぐ)に逆意(ぎやくい)を勧(すゝ)めし条(でう)。是(これ)また重罪(ぢうざい)なれば死刑(しげい)に行(おこな)ふ
べきなれども。川継(かはつぐ)が死罪(しざい)をなだめ宥(なだむ)る上は其母(そのはゝ)も死刑(しけい)を免(ゆる)し。川継(かはつぐ)が姉妹(あねいもと)とともに
淡路国(あはぢのくに)へ配流(はいる)し。其余(そのほか)川継(かはつぐ)が隠謀(いんばう)に荷担(かたん)せし者ども罪(つみ)の軽重(けいぢう)に因(よつ)て配所(はいしよ)
の遠近(ゑんきん)を定(さだ)め流罪(るざい)に処(しよ)すべしと宣(のたま)ひければ。諸(しよ)臣下(しんが)領掌(れうぜう)し奉り。誠(まこと)に川継(かはつぐ)
母子(おやこ)が二 度(ど)の大 罪(ざい)重(おも)く刑罰(けいばつ)あるべきに。母子(おやこ)とも死罪(しざい)を宥(ゆる)し給ふ事。実(げに)有(あり)がたき
御仁政(ごじんせい)かなと感嘆(かんたん)し。川継(かはつぐ)を首(はじめ)とし一 味(み)の輩(ともがら)を皆(みな)それ〳〵に流刑(るけい)に行(おこな)ひ。彼(かの)乙人(をとんど)は