Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 88

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巨魁(かしら)とおぼしきは色(いろ)赤(あか)く篆書(てんしよ)の如(ごと)き紋(もん)ありて肥大(ひだい)なり。偖(さて)漸々(ぜん〴〵)に数(かづ)多(おほ)く出来(いできた) りて幾万(いくまん)といふ数(かづ)をしらず。始(はじめ)は見る人も無(なか)りけるに三人五人と寄聚(よりあつま)り果(はて)は老若(らうにやく) 男女(なんによ)群集(くんじゆ)して是(これ)を見物(けんぶつ)し百般(さま〴〵)説(せつ)を立(たて)てながむる内(うち)に。又 東南(ひがしみなみ)の叢(くさむら)よりも同(おな) じく無数(むすう)の蝦蟇(がま)追々(おひ〳〵)出来(いできた)りて境内(けいだい)に入 東西(とうざい)にわかれて列(れつ)を立(たつ)る事。さながら 陣(ぢん)を張(はり)屯(たむろ)をなすに異(こと)ならず。凡(およそ)二三丁の間(あいだ)東西(とうざい)の蝦蟇(かいる)六七万に充満(みち〳〵)たり。斯(かく)て 諸人(しよにん)目(め)も離(はな)さず見物(けんぶつ)するうちに。東西(とうざい)の蝦蟇(がま)声(こゑ)を揚(あげ)て飛寄(とびより)〳〵入乱(いりみだれ)て咬(くひ) 合(あふ)程(ほど)にあるひは手脚(てあし)を咬(かま)れて血(ち)に染(そみ)。弱(よは)り果(はて)這(はふ)事も叶(かな)はざるは他(ほか)の蝦蟇(がま)来(きた)り て背(せ)に負(おひ)叢(くさむら)へ入もあり。あるひは其場(そのば)にて噛殺(くひころ)さるゝも有(あり)互(たがひ)に咬合(くひあひ)てともに死(し)す るもありて。一向(ひたすら)軍兵(ぐんびやう)の血戦(けつせん)するに一般(さもに)たり。諸人(しよにん)始(はじめ)は世(よ)に沈珍(めづら)しき事におもひてながめ 入けるが。後(のち)には見る目(め)も痛(いた)ましく袖(そで)を覆(おほ)ふて見(み)得(え)ざるも多(おほ)かりけり去程(さるほど)に東(とう) 西(ざい)の蝦蟇(がま)の咬合(くひあふ)こと二 時(とき)ばかりにして漸々(しだい)に別(わか)れ引退(ひきしりぞ)き果(はて)は一 疋(ひき)も残(のこ)らず無(なく)