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なりけり衆人(みな〳〵)不思議(ふしぎ)の事におもひ。末代(まつだい)はしらず前代(ぜんだい)いまだ聞(きか)ざる珍事(ちんじ)かな所(ところ)
こそ多(おほ)きに。仏法(ぶつほふ)最初(さいしよ)の道場(どうぜう)現世(このよ)の極楽浄土(ごくらくじやうど)と唱(となふ)る御寺(みてら)に。かゝる奇怪(きくわい)
ある事。何(いか)さま兵乱(ひやうらん)などの発(おこ)る前表(ぜんへう)にやととり〳〵に評論(ひやうろん)し。また翌日(あす)も蝦(が)
蟇(ま)の闘(たゝか)ひやあると。聞伝(きゝつたへ)たる徒(ともがら)早朝(さうてう)より天王寺(てんわうじ)へ群聚(くんじゆ)する事 前日(ぜんじつ)に十 倍(ばい)し
終日(しうじつ)待暮(まちくら)せども。其後(そのゝち)は蝦蟇(かいる)一 疋(ひき)も出来(いできた)らず。其辺(そのへん)の叢(くさむら)を捜(さが)し尋(たづぬ)れども
蛙(かはづ)一 疋(ひき)だも居(ゐ)ざりけるぞ不測(ふしぎ)といふも疎(おろか)なりける
山城国(やましろのくに)長岡都(ながおかのみやこ)経営(けいゑい) 早良親王(さうらしんわう)謫罪(てきざい)憤死(ふんし)条
桓武天皇(くわんむてんわう)平城(なら)の都(みやこ)を山背国(やましろのくに)に遷(うつ)【迁は俗字】さまほしく思召(おぼしめし)中納言(ちうなごん)藤原小黒丸(ふぢはらのをぐろまる)従(じふ)三
位(み)藤原種継(ふぢはらのたねつぐ)両人(りやうにん)に命(めい)ぜられ。帝城(ていじやう)とすべき良地(よきち)を択(えら)ませ給ふ。両卿(りやうけう)勅命(ちよくめい)
を奉(うけたま)はり山背国(やましろのくに)へ立超(たちこへ)東西南北(あなたこなた)を巡見(めぐりみ)らるゝに乙訓郡(おとぐんのこほり)長岡(ながおか)の地(ち)こそ他所(たしよ)
に勝(すぐ)れたれば。此所(このところ)こそ皇都(みやこ)となすに最上(さいじやう)なるべしとて。地図(ちづ)を写(うつ)して立皈(たちかへ)り