翻刻
/肥(こゑ)とする尓。火の気あるものゆへ。田地陽気を得て。苗長し/易(や春)
く。穀多く出来て。/䵷蛤(かいる)の類を/醃死(ころす)といへ里。」かく石灰盤
利あるもの尓て。此方尓ても。田の/瘠(や)せ人尓毒なることは。いまだ
たしか尓見当らさ連ば。用ひて気遣ひあるましきなり。石灰の
/肥(こゑ)尓て蝗を/除(のぞ)く事はならね共。/蛭蛙(ひるかいる)の類は死するといへり。畑尓て盤。
/土龍(をごろもち)も去るといふ。〇或人の/抄書(せうしよ)を見し尓。稲尓虫付たる時。
田一段尓/燈油(とぼしあぶら)三升ばかりを流し。よく〳〵/竹箒(たけはうき)抔尓てかきまぜ。
一面尓行わたる様尓す連ば。虫さるもの也。/榎(ゑ)の油は尚さら
よし。すぐ丹尓/糞(こゑ)尓なる也。こ連は河内邊尓て/験(志るし)有しこと也とぞ」
《割書:美濃邊尓て。もみ/種(た年)を寒中の水尓/貯(たくは)へ置てまくゆへ。蝗付須といへり。こ連は前以|いた須べきこと尓て。さしあたり為須べき仕方尓盤あらざる故。古々耳附録須》古連は久
しく言ひ傳へたること也。九州尓て盤専ら/鯨(くしら)乃油越用ひて。その
功大なりといへり。近頃大蔵氏の/除蝗録(ぢょくわうろく)を見し尓。文政乙酉の年
は。畿内より関東の間蝗多生し。東海道筋盤猶多か里し。
時尓予遠州尓阿りて。此田災を見るといへども。いか尓せん。鯨油の
正真なきこと越嘆息し亭ありしか。先/菜子(なた年)油尓て蝗を去
べき仕方を人尓かた里て用ひさせけ連ども。その功鯨油より
/劣(をと)里ぬ連ば。速尓はさりかたかりき。茲尓大井川の辺なる。上新田村
三右衛門なるもの。その苗の衰たる越見て。早くも蝗生したる
をさとり。その苗を三ツ尓わけ。その内蝗の多き田盤菜種油
多く五度尓い入。蝗のう須き田へは。油半越三度尓入。蝗の少き