翻刻
貯ふへし。西諸侯の内尓右の芋倉二三ケ所も持てるありときけり。古の
芋は水旱尓も。志ひてかまは須。土地の/肥瘠(ひせき)をも論せ春して出来るゆゑ。大尓
救荒の助となるべし。西国尓ては。平常とても。百姓の/扶食(ぶじき)と須るゆゑ。
薩藩の/成形図説(せいけいづせつ)尓は。穀の部に/収(おさ)め置り〇豊年尓は。/粒米狼戻(りうべいらうれい)して。
穀類尓ても/麁末(そまつ)尓/扱(あつ)かへば。まして海藻野菜の類は。棄たり費ゆること
多き也。志ある人かゝる時後手の事を慮んはかり。/久(ひさしき)尓たゆるものを
ゑらみて。たくわへば。費少くして。/恵(めぐ)み廣かるべし。豊年の時尓は大根
など作るものも。持あるく尓荷重くして。/直(あたひ)少きゆゑ出来あしき
ものを。/抜弃(ぬきすつ)る尓いたる。二十年以前の事なりし尓《割書:今の文久より五十|餘年前の古となり》大根
いたつて能出来て。價賤し。余。王子邊尓行し尓。彼邊尓ては。大根/夥敷(おひたゞしく)
ぬき春て。山の如く路傍尓つみし處所々尓ありき。加様の時尓少し尓ても
銭をとらせて買ひとらば。誰も春つまじ。干して畜へおき。貴く成て春くひ
/与(あた)へ。又はう里与へても。大なるめぐみとなるべし。芋大根も。穀尓ついて。人を
養ふ大なるもの尓て。その/干葉(不しば)も。穀を助べけ連ど。芋大根さへも。右之通
/麁末(そまつ)尓すれば。まして其葉などは。猶更の古と也。民は事繁くして。遠き
慮りなきゆゑ。穀物さへよく出来ば。他事尓及ぶいとまなく。手のまはらぬ
まゝ尓。春つるな連ば。後をおもんはかる。役人庄屋など盤春たらぬ様尓いひ
付べし。志かしいひ付るまて尓ては。やはり春つるゆゑ。少々づゝ銭をやりて
買ひとり。村々の郷倉の内尓積置べし。穀物も豊穣の時は。麁末尓
思へど。いたづら尓は。春つるものなかるへし。畢竟酒など多く作るといふまで