翻刻
【十九頁左】
【枠外上に十五と有】
酒は焼酒(せうちう)にして・あぢはひはなはだはげしく・水をわり用ゆ・
太平山(だひんざん)よりいつるを・太平酒(だひんしゆ)といひ・八重山(やゑま)よりいつるを・蜜林(みりん)
酒(しゆ)と云・上噶喇(かみむら)よりいつるは・あぢはひひとしほあまくして
あはし・日をける時は・変(へん)じて酸(す)となる・これを土中(どちう)に
うづめおくこと一年にして・焼酒(せうちう)につくれば・あぢはひたぐひ
なし・薩州(さつしう)にていふサトウアハモリこれ也・清人(せいひと)は女の口中(こうちう)にて
かみてつくるときゝて・うすきたなく思ふまゝに・のむ人すく
なし・国人はことさらに佳絶(かぜつ)也とて・きそひもてはやす ・
となん・
【二十頁左】
【枠外上に十六と有】
諳厄利亞(おんぎりあ)【英国】の人・紀行(きこう)の書(しよ)を見るに・千八百十六年・《割書:文化十三年丙子|年にあたる》
九月・琉球國にいたりし条に・此島は日本・あるひは朝鮮(てうせん)の孫(そん)
ならん・その容皃(ようほう)朝鮮人とあひおなじ・その性(せい)開豁(かいくわつ)にして
柔弱(じうじやく)なり・云々・また云・アルセスト《割書:舩の|名也》の舶吏(はくり)の長(てう)の婦おほく
陸にありしに・此島の官人(くはんにん)等のめぐみをうけしに・ある日 貴人(きふ)
来りて・おほひなる家をよくかざり・諸器(もろ〳〵うつわ)を設(まうけ)いれおくべしと
いえり・ある日また貴人・舶中(はくちう)へ来りし時・かの婦人(ふじん)に對し・
はなはだ丁寧(ていねい)なるやうにて・扇(あふき)をあたへしが・その後たつとき
一女(いちぢよ)・好事(こうず)にて諳■【厄の誤】利亞の婦を見んとて・かの婦ひとりおり
し處(ところ)へきたり・かの婦を四方より穴(あな)のあくほど見たりしが・