翻刻
【二十一頁右】
かの扇をもちゐたりしゆへか・いかにも妬情(ねたみこゝろ)をふくみし眼(め)の色(いろ)
にて・やゝひさしく見てぞかへりけり。《割書:さきに扇を【?】あたへし貴人|は国王にてのちにきたりし》
《割書:貴女は王の|妃なるべし》われ開帆の期すてにさたまりて・九月廿六日・琉球人
祭服(さいふく)して寺におもむき・犠牲(いけにゑ)を神に供(きやう)し・諳■【厄の誤】利亜人を
加護(かご)し・つゝがなく本国へかへらしめんことをいのれり・すでに
ひらけしほかのくにの・いつはりてなすところの・別離(べつり)の情(じやう)よ
りは・よく心にてつしてかなしかりを・此 質朴(しつぼく)の善心(ぜんしん)より・いづる
所なれば也・祈(いのり)おはりて・別(わかれ)をなさんとて・登 舶(ふね)にきそひ来りぬ・
無情の・ボナハルテ《割書:悪王|の名》なりとも・いかでかこれにかんぜさらんや・登舶
すでにさりし後も・ひさしく船中より手をあけて・其情(そのじやう)をしらし
【二十一頁左】
めり・われすでに南方へむかひおもむきしに・順風(じゅんふう)にて・
たゞちに此島はみえずなりにけり・しかれども此 土俗(とぞく)の
深切(しんせつ)と・情の厚(あつき)は・わが諸人(しよにん)の心に・ふかくかんじ・恩(おん)とし
たふとむなり・云々
【枠外上に十七と有】
銀は日本より渡す・豆銀はことにくらゐよろしく・是を
たうとみもちゆ・閩(びん)人はこれを球餅(きうへい)といふ・銭は寛永通
宝なり・別(べつ)に一種(いつしゆ)の國銭(こくせん)ありて・文字もなく外郭(そとのわ)もなし・
紙に刺して吉事の進物にもちゆ・
【図の下】
如此にしていたつてうすし