翻刻
【二十三頁右】
《割書:漂流記に船やふれてせんすべなかりしときかたはらにひとつの山いてさ【きの誤ヵ】た|りしかばその山にのぼりてふねをつくろいてのりうかみいでしかはその山は》
《割書:うごきてしづみしはヲキナにてぞありける云々これは北アメリカのおきの|ことにてそありしいまゑそよりいつるヲキナの牙(きば)といえるもこのたぐひなり》
《割書:どくけしとのみ俗(ぞく)にいへともさのみにあらずよくねつをさますことをつかさとる|もの也此ものおほひなるものゝとゞまりにてすべておほきしなどいふことばのも》
《割書:ともこれより|いでしとなり》いかにもして・いつちになりもこぎよらんものをと・
たたよいめくる所に・ことなる衣裳(いしよう)つけたる漁人(ぎょじん)・十 艘(そう)ばかりの
舟・こぎつれてとほりければ・はるかにさしまねきて・ふねを
ちかよせ・こゝはいつちぞとたつぬれとも・さらにつうぜず・紙に
文字をなしてとひければ・天地といふ二字をしるして・おの〳〵
ふねをはやめてこぎさりぬ・八郎もせんすべなく・漁に舟の往来(わうらい)
するをみれば・いづれにも地(ち)かたとほからじと・なみにまかせて
【二十三頁左】
こぐほとに・はるかに一の山をみだしたりければ・人々おほいに力を
ゑて・やう〳〵なぎさちかく・こきよりてのぼりみれば・こゝも異国(いこく)の
漁村(ぎよそん)にやあるらん・網(あみ)なんどさらして・家の二十軒はがり【ばかりヵ】も見えて・
かたはらに一のやしろあり・前殿(ぜんでん)に推朱(すいしゆ)やうの彫紋(ほりもん)ありて・文
字は黄(き)なるいろ・にほりあげたる・鎮面君真物(ちんめんくんしんぶつ)といふ匾(がく)をそ
かけたりける・《割書:按するに鎮西君真物(チンゼイキンマモン)なるべし爲朝のことならんか琉球|にては神をとうとむにかならすキンマモンとしやうすること》
《割書:をもて|はかる》これくきやうのばしよ也とて・船中の粮米(ろうまい)・武器(ぶき)なんど
はこびて・やう〳〵に食事つかひて・あたりを見まはすに・たゞ
蘇鉄(そてつ)・芭蕉(ばせを)のみおほくして・そが中にひとつの竒樹(きじゆ)あり・
枝(えだ)は藤(ふじ)の如く・葉は胡麻(ごま)のおほひなるににて・いつれを根と