翻刻
【二十六頁右】
〳〵・いのれどもそのかひなく・二《割書:タ》月あまりももみにもまれ・ふき
にふ【布】かれて・水はこと〴〵くつかひはたして・いかがはせんとあんじ煩ひしを・
四人のものどもの工夫にて・釜(かま)のそこに・椀(わん)をうつふけに打ふせて・
米をいれてこれをかしぐに・此わんのうちにしほとゞまりて・
つねの飯にかはることなし・なをもとやかくしてうかみ行ほどに・
いつくともしらぬ国はるかに見えければ・人々あらうれしやと・よろ
ぼひなからもよろこびしに・孝貴をはじめ四人のものともは・さき
なる地をきつと見てゐたりしが・おたがひに小音(しやうおん)にかたり
あひしが・がんしよく土の如くになりてかなしみければ・八郎は
おほひにいかり・なんぢ等なにとて・かゝる不祥(ふしやう)のなかたちをなす・
【二十六頁左】
いつものくにゝもせよ・地のあらんこそ・漂船(ひようせん)の扶助(ふじよ)なるを・いま
はしき者ともかな・いで上陸(しやうりく)のちまつりにせんと・つかに手を
そえてのゝしりければ・孝貴ことはをあらためていふやう・
あれにみえ候は明(みん)の国にて候・そも〳〵我琉球は・南北わづか
六十里ばかり・東西十四五里の小国にして・大国の間にあり・
これにくはうるに・師旅(しりよ)のうれいある時は・いかなる賢君(けんくん)・勇(いう)
謀(ぼう)の将・ありとも・なかく社稷(しやしよく)をたもつことあたはず・ゆへに
鄰国(りんこく)のたすけにあらされば・寝食(しんしよく)をやすんぜず・よつて
貴国へも・応永(おうゑい)十年 六浦泻(むつらがた)についてよりこのかた・貢(みつぎ)を
献じ・後宝德三年より・兵庫の浦に交易(こうゑき)することを得