翻刻
【欄外】 手引草 上 六
【右丁】
○古人(むかしのひと)の板本(はんほん)にのこしたる養生(やうじやう)の書(しよ)あまたあれど腹(はら)
の内の機関(からくり)を書 加(くは)へたる書一 部(ぶ)
もなし京山(きやうざん)おもふに養生するにはまづ
第(だい)一に腹の中のことを知らずんばある
べからずたとへていはゞ親(おや)よりゆづり
うけたる文庫蔵(ぶんこぐら)になにが有やら
しらずして錠(ぢやう)をおろして置(おく)がごとし
ゆゑに養生をしる人の心得(こころへ)の
為(ため)に腹のなかのからくりをくは
しく記(しる)すこと左(さ)のごとし
【左丁】
○そも〳〵人の體(からだ)の中にて万(よろつ)の用をなすは頭
にあり○鼻(はな)は口の裏門(うらもん)にて表(おもて)門の口 閉(とち)て
ありても鼻より呼吸(つくいきひくいき)を通(かよ)はせ又物を
齅(かぐ)の用をなす○目は物を視(み)て万
用をなし喜怒哀楽(きどあいらく)も目にあり
○口は命を保(たも)つ城廓(じやうかく)の表門にて昼
夜に一万三千五百の息(いき)をかよはせ
食物を入れて命をやしなひ言語(ものいひ)て用を
なす口に在(あ)る歯(は)は食物を嚼砕(かみくだき)て
消化(こなれ)やすきやうにして食道(しよくだう)の咽(のど)へ