翻刻
【欄外】 手引草 上
【右丁】
名をなしたるも盲人(まうじん)もあるなりおよそ人 会席(くわいせき)にて詩歌(しいか)など考(かんがへ)る
には必(かならず)目(め)を閉(とづ)る是それと知らずして頭脳(づのう)へ神気を凝(こら)すの
自然(しぜん)なり○人の生(い)きてゐる根本(こんほん)は頭なるゆゑ魂(たましゐ)も頭にあり
魂(たましゐ)につきまとふ神気(しんき)も頭にあり故に善心も悪心(あくしん)も馬(ば)
鹿(か)も利口もおほかたは顔色(がんしよく)にしられ吉凶も人相にあらは
るゝなりこれ魂(たましゐ)のある所なるゆゑなり○頭脳(つのう)の神気
より神経(しんけい)といふ枝がさしてその大枝(おほえだ)から小筋(こすぢ)の
肢(えだ)が幾すぢもありて體(からだ)中(ぢう)に弥(ぐるぐる)綸(まとひ)て
血をめぐらし血(ち)より霊液(れいゑき)といふ沢(うるほひ)がいでゝ
惣身(そうみ)潤沢(じゆんたく)して皮肉(ひにく)補(をぎな)ひ肌(はだへ)をうるほし
【左丁】
身(み)に温(あたゝまり)ありて生(いき)てゐる也此 道理(だうり)を近(ちか)く知(し)らんとならばくさ木の
葉をとりて見るべし葉には大 筋(すぢ)ありてそのすじより小すじが
いくつもありてその小筋にも目に
みへざるほどの
枝(えだ)筋ありて
大筋より地
気を吸(すひ)あげて筋〳〵へ地気をめぐらし
潤(うるほ)ひをなすゆゑ日に照(てら)されても凋(しぼ)ま
ざる也人の気血(きけつ)のめぐるもかくのごとし是天 工(こう)の霊妙(れいめう)也
○前にもいへるごとく