翻刻
【右丁】
天(てん)の作(つく)り為(なし)玉ひたること也 然(され)ばこそ日の照(てら)し給ふ所 夷(ゑびす)の国々まで人は
もとより獣(けだもの)までも女に乳(ちゝ)のあるは子を育(そだ)つる為(ため)也○さて男女(なんによ)交接(まじはり)を
なして子(こ)のてきる訳(わけ)は隠門(かくしどころ)の奥(おく)に子宮(しきう)といふ物あり《割書:ぞくに|子つぼ》大さは鶏(にはとり)
卵(のたまご)ほどにて形(かたち)は徳利(とくり)を逆(さかさ)にしたるやうにて口は窄(せま)く底(そこ)は濶(ひろ)く内
には精液(せいえき)とてねば〳〵してよだれのやうなるものが充満(いつはい)あり隠門(かくしどころ)へ
のぞんでをる口は常(つね)にはしつかりと閉(とぢ)てあり又 子宮(しきう)へまとひつきて
卵巣(らんそう)といふそら豆ほどなる小 袋(ぶくろ)がありて腎(じん)の臓(ざう)よりつゞきて
ある動血脉(だうけつみやく)と静血脉(せいけつみやく)とが子宮(しきう)へかよひ子宮(しきう)から小管(こくだ)がわか
れて卵巣(らんそう)のうちへもかの二脉の精液(せいえき)がかよひ弥淪(みち)てある也
婦人(ふじん)に此卵巣あるは男の睾丸(きんたま)
【左丁】
在(ある)に同(おな)じ此(この)仕懸(しかけ)が男(をとこ)と
かはりある所也○さて此 卵(らん)
巣(そう)の小袋(こぶくろ)のうちに大さ飯粒(めしつぶ)
ほどなるもの大抵(たいてい)十八九二十
ばかりあるもの也 是(これ)則(すなはち)天(てん)の
為(なせ)る霊物(れいぶつ)にて人になる卵(たまご)也
女としてこの卵巣(らんそう)のあること
乳房(ちぶさ)のあるがごとししかれば
女は子を妊(はら)むべきはづなるに
夫(おつと)ありても子なき訳(わけ)は次(つぎ)に記(しる)す