翻刻
酔(ゑふ)なり酔(ゑふ)は酒毒(しゆどく)に瞑眩(めんけん)するの也しかれども元(もと)が米(こめ)なるゆゑ下戸(げこ)も
さむればもとのごとしかく猛烈(まうれつ)なる熱物(ねつぶつ)をいかに好(すけ)ばとて毎日(まいにち)飲(のめ)ては酒(しゆ)
毒(どく)腹(はら)につもりて命(いのち)をへらすにちがひなし古人(こじん)これを警(いましめ)て酒(さけ)に五損(ごそん)
ありといへり一に命(いのち)を損(そん)じ二に徳(とく)を損じ三に心(こころ)を損じ士四に勤(つとめ)を
損じ五に財(さい)を損ずといへり○さて本文(ほんもん)に飣(さい)を少(すくな)くすとは食好(しよくごのみ)を
するなといふこと也○四に色慾(しきよく)を少(すくな)くすとは房事(ばうじ)を慎(つゝし)めといふ事也
房事(ばうじ)の命(いのち)を削(けづ)ること酒(さけ)に十 倍(ばい)せり前(まへ)にいへるごとく腎(じん)の臓(ざう)は命(いのち)の
根元(こんけん)也 廿歳(はたち)より三十二三までは人の春夏(はるなつ)のはじめ也 井水(ゐすい)も満(みつ)るとき
腎水(じんすゐ)の泉(いづみ)汲(くめ)ばもとのごとく湧(わき)出(いづ)るゆゑ病後(びやうご)はしらず多房(たばう)なりとも
さのみ命(いのち)は耗(へる)まじけれど四十の初老(はつおひ)の坂(さか)を
【絵の題目・矩形で囲む】
お目かけめみへ
【左丁】
【上部絵中の台詞】
《割書:●むすめ| 〽はい十七で》 のぼり五十 路(とうげ)をこへて少(すくな)くせよといふ色(しき)
《割書: ござりますと| としを》 慾(よく)を恣(ほしいまゝ)にしひとりならず二人も三人も血(けつ)
《割書: 一ッ| かくす》 気(き)盛(さか)んの楊貴妃(やうきひ)に精気(せいき)の衰(おとろ)へかゝりたる
《割書:●おもてづかひの| 女中〽おまへ》 天寿(てんじゆ)の源(みなもと)たる水(みづ)をかはる〴〵汲(くみ)いださせ命(いのち)の池(いけ)
《割書: いつ じやへ|》 の枯(かる)るを知(し)らず楽(たのし)みとするは章魚(たこ)がおのれ
が足(あし)を喰(くら)ふよりも愚(おろか)也 是(これ)を諫(いさ)むれば玄宗(げんさう)の
御 心(こゝろ)に叶(かな)はず楊貴妃(やうきひ)もいさめる人を憎(にく)み口(くち)
べにあかき舌(した)にかけていかなる讒言(ざんげん)かするな
らんとそれもおそろしく千金(せんきん)方丸(はうまる)のみのお手(て)
医師(いし)もあゝわろいがとおもひながら御酒(ごしゆ)の