翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション2

(無病長寿)養生手引草 2巻 - 翻刻

(無病長寿)養生手引草 2巻 - ページ 41

ページ: 41

翻刻

【右丁】 にて道(みち)に反(そむ)きてことを望(のぞ)むはみな慾(よく)也 慾(よく)の根(ね)は我欲(わがよく)より起(おこ)る大きく いへば国(くに)を奪(うばは)んとするも慾(よく)の我(わが)まゝ也 小(ちいさ)くいへばこれを追除(おひのけ)後役(あとやく)にな らんとするも我侭(わがまま)の慾(ほしいまゝ)【恣ヵ】也よくをかはけば独(ひとり)心(こゝろ)をくるしむ元(げん)気をへらすの 大毒(たいどく)也 慾(よく)を少(すくな)くして命(いのち)を養(やしな)へとの教(をしへ)也此十一 少(せう)の養生(やうじやう)は神医(しんい)孫(そん)思 邈(はく)が千金方(せんきんはう)にも類説(るゐせつ)ありて貝原(かひばら)先生(せんせい)の私説(しせつ)にはあらず此十一 少(せう)を 守(まも)りだにすれば養生(やうじやう)の術(じゆつ)こゝに尽(つき)たれども猶(なほ)又(また)古人(こじん)の名 説(せつ)をいふべし○前(まへ)にも引(ひき)たる五雑組(ござつそ)に「五十の後(のち)妾(てかけ)を置(お[く])べからず六十のゝち 作官(くわんをなす)べからず七十のゝちは名根繋念尽勅断(めいこんけんねんこと〴〵ちよくだん)に与(あた)へて天年(てんねん)を 保(たもち)て可(か)なり」といへり五十になれば命(いのち)の源(みなもと)たる水(みづ)を汲(くみ)いだす妾(てかけ) を置(おく)なと五雑組(こざつそ)にもいましめたり六十の後(のち)官(くわん)を作(なす)なとは隠(いん) 【左丁】 居せよといふこと也 然(しか)るにおとなしき息子(むすこ)によき娶(よめ)も在に眼鏡(めがね) をかけて十露盤(そろばん)をとり厚き銭(ぜに)は二文かと爪(つめ)をかけるも風前(ふうぜん)の 燈火(ともしび)無常(むじやう)のおむかひはのがれがたしはやく隠居(いんきよ)して天寿を延(のば)せ との教(をし)へなりし七十の後は名根繫念尽(めいこんけんねんこと〴〵)く勅断(ちよくだん)の天命にまかせ 与(あた)へて可(おけ)との教なり五十 以上(いじやう)の老人よい〳〵勘弁(かんべん)あるべししかし 仕官(しかん)の人は隠居(いんきよ)のならぬこともあるは論(ろん)のほか也○貴人(きにん)の妾(せう)あるは 好色(こうしよく)にはあらず御 血筋(ちすぢ)の多くあらんため也五十にして御血筋 の御 男子(なんし)あらば五雑組(ござつそ)の説にしたがひて妾をおかず長命をはかるべし ○古人の説(せつ)に養生(やうじやう)の要(かなめ)は自(みづから)欺(あざむ)くを忍ぶにありといへり欺とは真([し]ん) 実(じつ)ならざるをいふ我(わが)心にはわろいと知りつゝ真実(しんじつ)に悪(わろ)いと思(おも)はざるゆゑ 【欄外】 手引草 下  三十二