翻刻
【欄外】
手引草 下 三十四
【右丁】
「日月不居人誰得安(じつけつをらずひとたれかやすきことをえん)」といへり
日(ひ)の光(ひか)りも月(つき)の光(ひか)りも休(やす)むことなく万物(ばんもつ)の
為(ため)にてらし玉ふ貴人(きにん)も是(これ)見玉ふべし
○春(はる)は陽気(やうき)発生(はつせい)し草木(さうもく)も若葉(わかば)
萌(もへ)出(いで)人(ひと)も肌膚(はだへ)和(わ)して表気(へうき)開(ひらく)の
時(とき)なり然(しか)るに餘寒(よかん)猶(なほ)烈(はげ)しくして
冬(ふゆ)よりは寒気(かんき)に感(かん)じやすし草木(さうもく)も
餘寒(よかん)にはいたみやすし早春(さうしゆん)にはべつして養生(やうじやう)し
身(み)をつゝしみて陽気(やうき)を助(たす)けめぐらすべし
○夏(なつ)は発生(はつせい)の気(き)いよ〳〵盛(さかり)にして肌膚(はだへ)大にひらき
【左丁】
汗(あせ)もれるゆゑ外邪(ぐわいじや)入(い)りやすし暑(あつ)しとて涼風(すゞかぜ)に久(ひさ)しく
あたるべからず夏(なつ)は伏陰(ふくいん)とて陰気(いんき)
かくれて人の腹中(ふくちう)も冷(ひやゝか)なるゆゑ食(しよく)
物(もつ)消化(こなれ)おそし夏(なつ)腹中(ふくちう)の陽気(やうき)
なるは掘井戸(ほりゐど)の水 夏(なつ)はひやゝかにて
冬(ふゆ)はあたゝかなり腹(はら)のなかも
さのごとし冷物(ひやゝかなもの)をたくさんたべる
はわろし又 冷水(ひやみつ)を度々のむべ
からず腹(はら)の中 冷(ひえ)るゆゑ温(あたゝかなる)ものを
食(しよく)して脾胃(ひゐ)をあたゝむべし夏(なつ)ははだへも筋骨(すぢほね)も