翻刻
【欄外】
手引草 下 三十六
【右丁】
冬至(とうじ)までは極陰(ごくいん)の時(とき)也 老人(らうじん)の隠居(いんきよ)などは
陰(いん)を護(まも)りて一室(いつしつ)に冬(ふゆ)ごもりをなし身を温(あたゝ)めて寒(かん)
邪(じや)を防(ふせ)ぐべししかし終日(いちにち)衾炉(こたつ)にのみ在(あつ)て
身をあたゝめて過(すぐ)すべからず上気(じやうき)して元気(げんき)を
減(へら)すに至(いた)る酒このむ老人(らうじん)の
寝酒(ねざけ)飲(のむ)は格別(かくべつ)下戸の老人(らうじん)は
夜の四ッを待(また)ずして臥(ふす)べし寒
邪(じや)にいためらるゝは夜(よ)の寒(さむさ)にあり
○冬(ふゆ)は肌(はだへ)寒(さむ)くして腹内(ふくない)温(あたゝか)なること
夏とは反(うらはら)也こたつにあたりて眠(ねむ)るべからず
【左丁】
内外(うちそと)温(あたゝか)なれば五臓(ござう)乾(かは)きて気血(きけつ)を枯(から)し元気(けんき)を
へらす小児(しやうに)もね入(い)らすべからず
○冬至(とうじ)は陰(いん)極(きはま)りて一陽(いちやう)初(はじ)めて来復(らいふく)の時(とき)也 然(しか)れども寒気(かんき)猶(なほ)強(つよ)し寒(かん)
気(き)は来陽(らいやう)の発起(はつき)につれて寒邪(かんしや)人を侵(おか)しやすし用心(ようじん)すべしこの日は
よん処(どころ)なきことにあらずは他行(たぎやう)すべからず古書(こしよ)の教(をしへ)也又 冬至(とうじ)前(まへ)五日
後(のち)十日 房事(ばうじ)をつゝしむべし医書(いしよ)のいましめ也 蓋(けだし)女は多房(たばう)たりとも身(み)
にさはらず遊女(ゆうぢよ)にてしるべしこれには論(ろん)あれど事(こと)長(なが)ければもらしぬ
○十二月は急病(きうびやう)にあらずんば針(はり)も灸(きう)もすべからずこれも医書(いしよ)の戒(いまし)
めなり○中風(ちゆうふう)の病(やまひ)を俗(ぞく)によい〳〵といふ中風(ちゆうふう)は外(そと)の風毒(ふうとく)にあら
ず腹中(はらのなか)の風毒(ふうどく)なり四十を越(こえ)て酒食(しやしよく)房事(ばうじ)のやぶれによりて
【欄外】
手引草