翻刻
【右丁】
説(せつ)なり京山 袋冊子(ふくろさうし)を読(よみ)てのち夜行(やかう)などにはかならず
この哥(うた)を誦(とな)へ神霊(しんれい)の加護(かご)ありて不思議(ふしぎ)に災難(さいなん)をのがれ
たるおぼへあり児曹(こども)などには件(くだん)の哥を書(かき)て守袋(まもりぶくろ)に入れ
おくべし是(これ)禁厭(まじなひ)の一ッなり
○胎内(たいない)の男女(なんによ)を知る事
男児(をとこのこ)は母(はゝ)の臍(へそ)のかたへ背(せなか)を向(むけ)て左の脇(わき)にあり女 児(こ)は顔(かほ)を母(はゝ)
の臍(へそ)の方へ向(むけ)て右の脇にあり又 男児(をとこのこ)は妊(はら)みてより三《割書:ン》が月たてば
動(うご)く陽(やう)の性(せい)蚤(はや)きゆゑなり女児は五か月にて動(うご)く陰(いん)の性(せい)遅(おそ)
きゆゑなり此うごきやうにても男女(なんによ)を知(し)るべし
○変生(へんじやう)男子(なんし)の禁厭(まじなひ)
【左丁】
懐妊(くわいにん)して三が月の間(うち)を始胎(したい)といふ此間(このあひだ)は男女の象形(かたち)いまだ
不定(さだまらず)変生(へんしやう)男子(なんし)の禁厭(まじなひ)又は神仏(しんぶつ)へ男子を祈(いの)るも此三が月の間(うち)
にあり○さてまじなひのしかたは妊婦(にんふ)にしらしめず斧(まさかり)を妊婦(にんふ)の寝(ね)る
所の牀底(ねだのした)に刃(は)を下へむけて浅(あさ)く埋(うづ)め置(おく)べし蓋(けだし)斧(まさかり)のみには限(かぎ)る
べからず大刃(おほば)なる刃(は)物にても可(よ)しこれ是(これ)剛(つよき)物に気類(きるゐ)潜(ひそか)に感通(かんつう)し
て陰(いん)の女を陽(やう)の男に変生(へんしやう)せしむる禁厭(まじなひ)なりかやうにして鶏(にはとり)を
《割書: |●火のとまりしより》
試(こゝろみ)しに皆(みな)雄鳥(をとり)となりしとぞ又 碓黄(いわう)を帒(ふくろ)に入(い)れて《割書:●》三が月
の間人にしらさず懐中(くわいちゆう)するも変生男子のまじなひなりと
医書(いしよ)の第一たる本蔵(ほんざう)といふ書(しよ)を作(つく)りたる唐土(もろこし)の人 時珎(じぢん)といふ
が説(せつ)なりとて良安(りやうあん)が三才図会(さんさいづゑ)にいへり