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べしさても不思議なる事哉彼学者は是を見て蟻には分別ありや
否やと恠しみけると書置しも思へば真に理也乍去是は自己のなす
所に非ず御作者より与へ給ふいんすちんとの所為なれば驚て又驚く
べきに非ず
蟻よりも尚小さき虫の品々も多き者也喩へば草木の枝葉花実に
生ずる虫の類ひ也各色形も同じからず青黄赤白の隔あり又小き
内にも大小あり虫によては余りに小さきが故に形相見定め難しといへ
ども動くをもて虫なる事を知也其体さへも見難ければ頭面手足
六根の隔ては尚以見えざる也然ども此等にも其隔てなくんば有べからず
頭なくんば動く時何を先として動くべきや口なくんば何を以てか枝葉を
喰ふべきぞ喰ふ事分明なれば食を治る腹臓をも持ずんば有べからず
有かなきかの虫の体に此等の隔てを作り付給ふ事万事叶ひ給ふ御
力に非ずんば如何にとしてか叶ふべきぞ心を留めて思惟せば広大なる
大地を見て御作者の量りなき御力をしるごとく此等の極小の類ひを
見ても量りなき御力限りなき御智慧を弁へ奉る者也仰では天の
広大なるを見て御作者の御力を恐れ俯しては此等の小さき類ひを
親じて同じ御力を尊ひ奉るべし
【枠外右に 十七ケ条】