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一ッに集る事なし衆蜂は毒尾を持て敵を防ぎ蜜を奪ふ賊徒を
制し同類の罪科を罰すといへども王には此毒尾ありや否や未分明
ならずといへり其故は蜂王自罰を行ひし事をば未曽て見たる人
なし是を以て聖王の鏡とすべき一儀也賞は自行ひ罰は臣下に下知
して行ふ事是明王の道とす上に慈悲ありて民を憐む時は臣下二心
なく家長く国久しと諸のひろぞほの教へ置けるも是也去ば蜂ども
野渓の花に戯れ蜜を作る事は春立衣更着の比より秋の末まで
を限りとす冬来れば引籠り春秋に作り置たる蜜を食して蟄居
する也花を尋て出る時も巣を遠く離るゝ事なしを隣に花なくして
遠く趣かんとする時は先前駆の蜂を遣し所の易難と花の有無を
見定て後ならでは曽て趣く事なし又方々の蜂ども同じ野辺に
集まる時花すくなければ互に諍ひ鉾楯に及ぶ事もあり又巣の内に
蜜すくなふして冬の養ひ乏しからんと思ふ時は他の蜂の蜜を奪はん
とて人の弓箭を取如く数万の蜂共手々に分り大将を先立て軍を
なし戦場に骸を残すもあり爰をもて彼蜂の上は好きにも悪き
にも人間の態に相似る者也爰に又一ッ人に勝れたる態あり人は未来を
知る事叶ざれども蜂は是を弁へて雨風烈しからんと知る時は青天
【枠外左 初巻四十八】