← 前のページ
ページ 108 / 202
次のページ →
翻刻
白日なりといへ共家の辺りを離るゝ事なし蜂を飼人是を見れば必
天気の替るべき事を知て農夫に告るといへり此等の儀を先として
加程小さき蜂の身に御作者より与へ給ふ才覚の奇妙なる事真に
筆にも及び難し又是を何の用ぞと窺ふに蜜と蝋とを作らしめ
給ひて人間の用所を達したまはん為也然に人は是に心を付る事なく
御礼をも申上ず御作者の御智慧御力御慈しみの深き所をも
感ずる事稀也
第十九 蚕の事
蜜を作る蜂の才覚も奇特なりといへども綿を非【注①】る蚕の上を見れば
又劣らざる不思議也此虫の業をもて天子将軍の御衣 ds の御堂の
荘厳も皆以て是より出来る者也ぜろにもびいだすと云文者二巻の
書を編立此虫のわざを截【注②】られたり其中を抜てもて少々爰に顕す
べし先此蚕去年より如何にも小さき種を産置たるを年明春も
立ば取出して或は日のさし当る暖かなる所又は女の懐の中にて
あたゝむるに三日をへ経ずして小さき虫となり六根を具して出る也
【枠外右 十八ケ条】
【注① 非は作の誤ヵ】
【注② 截は載の誤ヵ】