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違背するがゆへに僅の虫の類ひまでも順ふべき人を背きて仇を
なす事尤也能々是を思惟するに如此の御罰は又御哀憐ともなる者也
其故は現世に苦患なきに於ては一向爰に執着して未来の勤めに
懈怠すべし喩へば童部を乳より離さんとする時は乳房に苦き物を
塗如く世界に苦しみ多きをもて人の執心を離させ給ひて未
来の快楽を願ふ媒となし給ふ事尤深き御慈悲也
第二十 右の外禽獣に備る不思議なる徳儀を
顕す事 次第不同
右の条々に載る禽獣虫魚の徳儀を見て心あらん人は御作者在ま
さずして叶ざる道理並に尊体に備り給ふ量りなき御智慧御力と
人間を思めす御大切万物を治め給ふ奇妙なる御計ひ等の御善徳を
弁へ奉るべしといへ共猶も愚なる人の心を導かんが為に禽獣の上に
なし給ふ不思議なる事どもを撰び集めて少々爰にのする者也
一あらびやの国にへいにすといふ鳥あり此鳥は世界の中に唯一ッのみ
あり寿は五百歳に及ぶといへり死期来ると覚えぬれば彼国に多き
乳香とみいらなどゝ云薫薬を集めて巣の如くにして其の中へ入て死する
【枠外左 初巻五十】