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よく風をきらんが為也さてさきなる鳥の草臥る時は是も右の鹿の
ごとくにすると也去ば人倫も此等の禽獣の態を鑑て互に孚み互に
力を添べき事也衆力を一ッに合する時はならずといふ事なし
一ゑりあゝのゝ記録に見えたるは昔しいちやの国の帝二疋の名馬を
持給ふ也一匹は母今一匹は其子の駒也二ながら世に稀なる馬なれば子孫の
なからん事を歎き給へ共親子一ッに巣立けるゆへにや更に嫁する事
なし或時母を色々につゝみて其とも見えざるごとくにしければ駒是に
嫁したり其後包たる道具を取のくれば駒は其母なる事を見て
峨々たる所に懸あがり自ら身を落して死す同く母も続て懸上り
とび落て死したりといへり嗚呼無智の獣の中にさへ親子の間の道を
知りたる事誠に以て不思議也誤て其道を違へければ自ら其身を
亡せしとあるはさても希代の一事に非ずや而に有知の人倫として
稀にも此道を違ふべき事は恥ても猶余りあり
一塊鳩も雌雄二ッの内何れなりとも死してより生残れる鳥は
再び嫁する事なしといへり鳥類さへ如是真に人の鏡とすべき所也
一犬を作り給ふ事は間近く人に使へん為なれば万の獣の中に
象を除きて犬ほど賢きものはなし犬の賢き態を古人の書置ける
【枠外左 初巻五十一】