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事多しといへ共中にも不思議成しは或時商人一人商売の為に
他所に趣くに飼たる犬の慣ひとして主人を慕ひ行也彼人路次
にて用所ありて傍に立寄ける間に銀子を入たる袋を落し少しも
覚えずして行去ぬ宿所に着て見れば銀子もなくつれたる犬もなし
驚きてこしかたの道に立帰り落せし銀子を懇に尋見る内に以前立
寄たる傍に至りて見れば犬爰にあり而も落せし銀子の袋を守り
居たり嬉しく思ひて袋を取上帰りさらんとするに犬は主人を慕ふ
事叶はずして則死したる也是道遠くして日数を経ぬれば其間
彼犬食せざりし故と也是ゑりあゝのゝ書に見えたり畜類さへ主人を
思ふ事如此なれば尤不忠の臣下の恥べき処也主君に対して二心なく
身命の危きをも顧みされと此犬をもて御作者より人に教へ
給ふ者也
一馬も又貴人高家の乗物として ds 作り給ふが故に万事其用に
叶へり毛の色々美しく形尋常にして見事也何の獣か如之哉先勇
気駿足にしてかけめぐる事は広野をも狭しとすれども人に随ふ
事は自在也又結搆なる鞍ををき馬面馬鎧をかけ美々しく荘り
立られ舎人余多付たると覚ふれば広き小路をも狭しと踊りはね
【枠外右 二十ケ条】