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翻刻
於てをや然則父母の赤白を道具として是をなし給ふ無辺智力の水上
有べき事疑ひなし此儀を猶も諍ふ族は上手の手を籠めたる鎧甲六
具等の一縮したてたるを見て是にも作者なし只鉄を火中に拋て
かやうになれりと云に同じ如此愚頑の漢には強て拘る事なかれ去程に
往昔の医王がれのは人身建立のからくり妙なる所を世に伝へんが為に十
巻の書を作して云く予此書を編事強て医を伝ふるに非ず唯御
作者を尊崇し御誉れを挑ぐる為也所以者何御作者を尊ぶ勤めは薫
香を備へ百疋の牛羊を手向くるのみには限らず人身建立の微妙なる
所を見て是を巧み給ふ広大の御智慧と是を作り給ふ自在の御
力と御作の物に不足なく其身を養ふ道具を与へ給ふ御仁徳を仰ぎ
敬ひ奉る事こそ真実の尊敬なれといへり去ば此がれのはひですの御
法を受ず正しきぜんちよたりといへ共古今無双の名医たるによて人
身の建立を微細に分別し学力の上より御作者を明白に弁へたる者也
去ば小世界の徳儀を知る事は ds の御善徳を見知り奉る為の足しろ
なりといふ事疑ひなし故に左に少々記すべし然ども是且は我家の
道に非ず且は尽期なき事なれば細砕書載るに及ばず
【枠外左 初巻五十四】