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うみどらぢかるとて油気たる潤ひあり是を物に喩ふればかろるは火
うみどは油の如し彼かろるの火は此うみどの油に付て燃る間は人の
命を保つ也又燈は燃る程あぶらをも費す如くかろるの熱精も時々
刻々にうみどの潤ひを費し加之骨肉をも同時に干燥する者也是に
よて諸の生類日々に飲食を用ひて此ついえを補ふ者也人久しく食
せざれば顔色憔悴するも此謂也去ば食物臓腑に入て消化して
血気等になる時脂膏のごとくねばき分はうみどの潤ひと成て
かろるの熱を養ふ也然といへ共其潤ひの位以前ついえたるには及ばず
して漸々に衰へ行が故に熱精も又衰へ行き終には消て必人の命も
亡ぶる也
三右にいへる如く人身は頭上より脚下まで食事をもて其ついえを
補ふ物なれば食物の気の通ずべき道なくして叶べがらず其によて
十指の爪さきまで全身に経絡しげく満々て行渡り血気等を
通用して補養する者也喩へば草木の葉を見よ大小のすち縦横に
有て所として至らずといふ事なきがごとししかのみならず人身は
皮肉も筋骨もぽうろと云て毛頭のごとき穴満々たり是則四肢百
節の上にをひて其精気養育をたがひに受べき通路の為也
【枠外左 初巻五十六】