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似たりつく息には上さまにしなひて風を通じひく息には下さまにしな
ひて風を通す者也然ば此二の咽喉左右に双ばずして上下に重りて
肺胃まで真直に立り食事ののどは下にありて息風の咽は其上に
重れり是に付て不審有べし其儀ならば此二の口は双びて有べし
さあらば人飲食を用る時誤て息風の咽に飲食入て息の通ひを留め
死に及ぶ事も多かるべきに此儀稀なる事は如何答て云く元より其
口は二ながら一所に双ぶといへ共人飲食を呑却する時食事の通る
のどの口は下にさがりて食物をうけとり息の通ふ咽は上にあがりてゆき
ちがふ者也喩へば天評【注】の皿の一方下れば今一方は必上るがごとし爰をもて
人飲食を用る時二の口上下に隔りて曽て危き事なしさても奇妙
なるあやつり哉最上の御智慧の巧み給ふ所なれば却て驚くにたらず
去ば食物喉を通りて落つく所は胃の腑也
胃の腑をば鍋に喩ふる也其ゆへは人の食するほどの物悉く爰に集るを
胃の腑は自ら持たる熱精にて煮とらかすによて也然ども此銷鑠を
胃は自熱のみにて叶ひ難きがゆへに隣りなる心肝の二臓も己れが熱
精を通ずる也而るに胃の腑は二重なる物なれば其二重の中間に胆の
腑より黄水を入れてなべの下に火を焼がごとく胃の腑を下よりあたゝ
【枠外右 二十四ケ条】
【注 「評」は「秤」の誤ヵ】