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第一 御作の物を以て思惟するより
深き徳を得る事
古より今に至るまで大智発明の学者諸縁を離れて無事安閑を好む
事を何ぞといへば只天地の間に奇妙なる御作の物の始終を観念するに
あり是をもて人の専用となる宛所を弁へ知る儀なれば其観念に心を
懲す者也然れば人間の端的を見知らざるときんば我等が行ひ何の道を修
して然べきぞといふ事をも知らぬ也ゆへいかんとなれば学者の語に
道となる所作は其極に随て定むる事なればなりと去ば此等の事を
論ぜしぜんちよの学者は未達したる光を受ざるが故に論議遼にして
其究めを知らず然れども上智賢才なる学匠の定めは人の安閑を得
べき道理といふは第一勝れたる所作をなすにありと其所作即森羅
万像の御作者を見知り奉るより外になし乍去此思惟をもて安楽を
ゑんと思はゞ小縁にては叶べからず度々時に応じて観念三昧ならずんば
有べからず彼修行を勤たるあまたの学者の中にせねかといふ一人は他に
ことに■【抽ヵ】で久しく修行を励したる人也是即らうまの都の帝王の
御心に叶ひし寵愛の師範たりといへとも此等の修行に入らん事を思惟
【左枠外に 初巻一】