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徳を与へ給ふ事万事叶ひ給ふ御力に非ずんば誰か是を叶ふべきぞさて
又眼の体は方寸に過されども山河大地国邑城裡森羅万像とても
悉皆眼裡の狭き門戸を通りて人のあにまに至る事を以奇妙也
第二のせんちいどは耳根也其あやつりを見るに耳裡の奥にみりんがと
いひて薄皮をつほめたる袋あり其中に風を含めり大皷をはりたるに
喩ふる也外より来る音声此風袋に中りて響をなす時人は物を
聞入る也若病によて彼みりんが損亡し含みたる風気失散すれば
人聾聵となる者也故に耳には外に構ありて穴も又斜めなる事
此風袋を守り給ふ御作者の御計ひと見えたり去ば外の音声此
ふくろに至るばかりにては人物を聞事叶ふまじきが故に是も眼に
等しくこむんより左右に筋下りてすぴりつあにまるを賦る也此
精力を耳根に受て根境相応して織をなす者也角て聞得たる
音声言語等のゑすぺしゑは件の筋よりこむんに至て其より又段々に
奥のせんちいどに納まる者也
第三は鼻根也是もこむんより二の筋を下してすぴりつあにまるを
通ずる也此筋の鼻の裡にて留まる所は私かにして花蘂なんどのごとく
なる肉也さて鼻根の境界は万の匂ひなれば物の匂ひ風に乗じて
【枠外左 初巻六十五】