← 前のページ
ページ 165 / 202
次のページ →
翻刻
知る一偏也喩へば是非善悪曲直邪正等を見て善は善悪は悪邪は邪正は正と
見知る一偏也 他准之次にはじゆぢしよとて一偏に見知りたる物を
糺し明らむる事也喩へば是は善也非は悪也邪は曲也正は直也としり又
善は悪にあらず非は是にあらず邪は正にあらず曲は直にあらずとしり
或は分ち或は同ずる物也三にはぢすくるそと云て糺し分けたる事の
上を工夫商量する也喩へば邪正の二は何れをかとり何れをか捨てんと
思惟する時直きを撰び曲れるを捨るは人倫の道とする所なりと
見得してさて正は是直邪は是曲なれば皆人邪をひ翻へし正に帰せずんば
有べからずと商量する者也他も亦准之じて弁ふべし然れば今
是を見るに如此彼此各別の形相を離れてうにべるさるの道理をあつかふ
精力は人を除て他の生類になき事明白也さてかかるはたらきをなす
いんてれきとはこるぽらるぽてんしやに非ずして色相のぽてんしやに
超越する事歴然なれば全く是すぴりつあるぽてんしやなる事
疑ひなし
尚亦人の智慧を以て巧み出したる万の芸能を見るに智慧は色相に
非ざる証拠顕はるゝ也看々昔より今に至て如何なる禽獣か陰の具の
数を集めて山野海河の眺望花鳥風月の景気春夏秋冬の詠め
【枠外左側 初巻七十七】