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懇切なる人是也御あるじには此等の儀皆達して備り玉へば争か思ひ
奉るまじきや御身に隔り奉る事は御善徳を見知らざる故也願くは御
光をもて心の闇を明らめ給へ去ながら尊体を直に見奉る事叶はず
如何なる了簡をもて御見知り奉るべきぞ見る程の事は六根の門戸に
面影を移して見る者也然に御身は此門戸より入給ふ事叶ひたまはぬ
尊体にて在ませば面影を持奉る事も叶はず我等が浅智短才を以て
広大無辺の御智慧に比べ奉らば天地雲泥の隔と申奉るも愚かなる
事也只御作の物を観じ見て量り在まさぬ御処を少しなりとも
窺ひ奉るより外有べからず是又下界の学門よりも猶高上の儀なりと
弁へ奉るが故に心の歓喜を生ずる者也喩へば鳥の觜を河にひたじて
水を飲といへども呑尽す事なし只一口二口をもて満足するがごとく
我等も緒善万徳の源にて在ます ds を有のまゝに窺ひ奉る事は叶はず
只一滴の味ひをもてあにまに悦びを生ずべき者也与へ給ふがらさの御合
力を以て弥御身を見知り奉り御大切に燃立事も叶ふべきと頼母敷
心を強め後生を扶かる学門の道を初むべし我等に与へ給ふひですと
未来を記し置給ふ貴きぽろへたすを以て経文に書載せ給ふ事も
亦大なる便り也御作の物に顕るゝ歴々たる次第を見て御身を思ひ
【左枠外に 初巻 六】