← 前のページ
ページ 49 / 202
次のページ →
翻刻
奉れといふ語也夜は天下国下の政をも止らるゝによてだびつ王位も
其障ありと宣ふ儀也又いざいあすもわがあにま御身を夜中に望み
奉ると宣ふ也誠に善人は夜中に起上り月星のいろどりうるはしきを
ながめて御作者の美麗清浄に在ます処を観じ燃立給ふ者也
月星の事
月の上を論ずるに則日輪の名代とも云つべし其故は ds の御定めに
よて日輪彼を照す為に此を去れば跡は闇也月なからせば暗に愁を結ぶ
べきが故に夜を照すやうに定め給ふ也月は自己の光を持ず日の光をかるに
付て其趣をいふに先上の弓張より次第に日輪に対面するにし随ひ光を
まし十五日には正面に向によて満月となる也別して月は水と湿気を
司どるが故に潮も月の盈虧に随て満干あり月の満る時は潮もみち
欠る時は潮も乾く者也磁石の針を吸が如し此等の事御主より計ひ
玉はずんば争か叶べきぞ只人間の為に角あれと定め置給ふ者也又
湿気ある物を進退する証拠は月の盈虧に随て草木の潤ひも増減
あるのみならず貝蟹の類ひに明に見えたり人の上に於ても血気を生
ずる事月の盈虧に随ふ者也嗚呼是をよく思案せば御作の物の上に
大なる奇特を見出すべし月のあり所は百千万里隔といへども下界の
【枠外左側に 初巻十九】