← 前のページ
ページ 52 / 202
次のページ →
翻刻
本所に帰らんとする者也其例風火の二大に明也地中に風の籠る時は
己れが本所に非ざるが故に本の風大に帰らんとて大地を震動させ爰を
崩し石を裂て出る也蝋燭の火を逆になす時其焔上に揚る事は本所の
火大に至らんとする故也又四大は各其体を保たんとする也証拠をみんと
欲せば水火風の上を見よ火の中風の中を分る事あれば程なく
其跡は一ッにみちあふ者也又一滴の水を灰𡋯の上に落すにも必一円相と
なる也雨のあしも砕けて斑々に降るといへども地に落てよりは一所に
集りて流るゝ者也是其体分々になる時は亡び失る事安きが故に
其儀なからんが為也
去ば四大に限らず四大和合の有情非情も各其体を保ち亡びさらん
事を欺く者也水に油を入れば各々になりて交はらず塩を火に入れば
塩の性は水なるによて火中に留まる事を得ず飛出る者也陰に生じ
たる樹木は日輪の湯気を尋て其梢高く生ひ立者也又水辺に植る
樹は水の方へ根をさす也是皆己が体を保ちそだてんとする故也嗚呼
人の心の迷へる哉飲食打眠の外には思ひ弁ふる事なく此等の万物の
始終本末をも堪弁せざる事は何事ぞ眼を開ひて能看よ御作者
在まして其々に与へ給ふ徳儀の明白なる事を
【枠外右側に 六ケ条】