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§ 二
又諸木の巣立行を見るに是も不思議の一事也先草木の為には根を
以て口とす其根の内にもいとすぢのごとくなる小筋を与へ給ひて其
より土の湿気を吸とり心にも枝葉までも全く通ずるやうに計ひ
給ふ也人の身の中にさま〴〵の筋を以て血気を通用させ給ふことく
一枝一葉の内までも数々の筋ありて雨露の恵みの全体に行わたる
やうになし給ふ也又せねかのいへるごとく諸木諸草は無量なりといへ共
二ッとも似たるなき事は大なる奇特也色同じけれども大小替り大小
同じければなりも替り何れも等しきはなき也此不思議は人の上にも
ある事也万方世界の人の数積りがたしといへども少も違はぬ顔
なし是を以て御作者の御智慧量り在まさぬ事を分別せよ又
草木の実のらぬさきに葉を茂らせ給ふ事は荒き雨風に浸されて
其実零落せざらんが為也然ども雨露の恵みと湯気をも受ぬには
非す葉のしげりたるひま〴〵より湯気をも雨露をも受る者也又其
実の性の弱きには笠をきたるごとく大なる葉を覆ひ給ふ也是即蒲萄
又は苽【瓜】などの上に見えたり
§ 三
【枠外左側に 初巻二十七】