← 前のページ
ページ 79 / 202
次のページ →
翻刻
羽ぶりを見て隠れよと叫べば其を聞知て隠れんとする也是誰が
教へぞや誠に御作者より彼等に智慧をば与へ玉はねども身を養ふ
いんすちんとゝいふ精を与へ給ふといふ事明也又さんばじりよとさん
あんぽろうじよの記し給ふ事あり海辺に蟹あり石花をもて好物
とす故に石花の有あたりに窺ひゐて石花は陽気をうけんとて口を
開けばかに小さき石を投入るに其石に碍られて石花口を塞ぎ得ざる
時かにははさみを以てはさみ出し恣に服するといへりゑすぱにやの内
びすかやといふ国の辺りに名山あり其所の狐はかにを好みて海辺に下り
海に入り身を沈めて尾計を浮てゐる所にかには其謀を知ずして尾の
上にのる所を汀にはねあげて食すると也加之狐は未来をも顧みて
食し残したる庭鳥などをば土を穿て埋み置也是即明日を期する
験也又狐の身に付たる蚤を掃ふ才覚も賢き者也蚤に攻られて為方
なければ木の枝を含て水中に入り次第々々に身を沈むればのみは水の
至らぬ所を求めて頭をさして上る所に果して首をも水にさし入るれば
為方なく彼含みたる木の枝にのみは集まる時忽其枝を流してのみを
亡すと也鼠は油にすくがゆへに油の入たる壺の口の細ければ尾をさし
入て浸し取てなむる者也こゝぢいりよとて肉食する獣ありかれが
【枠外左 初巻三十四】