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くちばしにて糸を引ひつゆるめつ色々に樞りて終には水をつり
あげて飲也是常に人の見る事なれば珍しからねども見慣れざる
人に対して爰に記す也又おうりいそといふてちいさくみじかき
獣ありくびより尾のきはまでは毛の代りに針の如くとがりたるもの
満々てありりんごを好むが故に木の本に行て落たるを喰て飽ぬれば
喰ひあましたるをば己れが穴に運びゆく也其運ぶ様を見るに尾頭手
足を一ッによせて身を丸め玉に針を付たる如くになりて木の本をあなた
こなたにまろびりんごをあまた針に貫きてより元のごとくに身を伸て
りんごを負て穴に帰る也又てれめるがといふ魚にも不思議なる事あり
泥の裡に隠れゐれば其辺に近づく魚は皆寝入ると也然をてれめるが
泥中より出て取て喰ふなり又漁人鉤を垂る時若つりばり此魚に
さはれば魚はいとを伝ふて竿より手元に来て手をなやますが故に
漁人はつりを抛つといへりゑりあゝのといふ人虎に付て書けるは虎は
猿をすきて喰ふが故に大猿あまたある所に忍び行て木の本に伏て
死したるふりをすれば梢を渡る猿ども是を見て死したるとは思へ共
さすが怨敵なれば心を赦さず実否を知らんが為に先一疋の猿を遣す也
虎は尚も空死にして動かず彼猿再三近付て試るに異儀なければさる共
【枠外左 初巻三十五】