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御計ひはあらからんといふ毒の虫の上に見えたり此毒虫にくはれ
たる人十二時の内に療治を加へざれば忽死する者也此虫は一度に十一の
卵を産ども十ほどは其母虫是を食して残る一ッ計を巣立る也其一ッの
子も終には母を喰ひ殺すといへり故に此虫其の数少き也ばらじるといふ
国にも毒蛇あり人にくらひ付てより当座に其くらひ口の肉をきり
すてざれば人死せずして叶はずかほどのあしき毒蛇なれば ds より其
頭に鈴の如く鳴物を作り付給ふ也かれが身を動かす時は必なる也人其
音をきけば則爰に毒蛇ありと心得て覚悟をなすが故に輙く喰はれ
ざる者也去ば如此の毒蛇猛獣は稀にも入らざる者也所詮なきにはしかじ
是を作り給ふ事いかんといふ不審あるべし答て云く能国を治るには
賞罰の二ッなくて叶はず忠功を賞ぜん為には恩禄を定め置罪科を
罰せん為には杻械枷鎖の攻具を調へ置ならひ也其如く ds も罪人御罰の
為に毒蛇猛獣をも作り置給ふ也其証拠はいずらゑるの人民に御折
檻を与へ給ひし時も毒蛇をもて苦しめ給ひ慧実土の万民を罰し
給ふにも蚊虻の類ひにて攻給ふとゑすきりつうらに見えたり
其程に鳥獣の身を養ふ餌食のさま〴〵なる事と其を求むる才覚と
道具色々なるを見るに御作者の御智慧量りなき所顕れ給ふ也
【枠外左 初巻三十六】