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熱湿燥の四ッをそれ〳〵の身に備ふる也此四ッ平等なる時は勇健息災也
若大過不及あれば則病悩出来る也人は智慧を以て薬種を求め
医道をならひて諸病を療治する者也禽獣は智慧なければ医道を学ぶ
事叶ざるによて己れが病を治すべき薬をばならはざるにをのづから弁ふる
いんすちんとの精を御作者より与へ給ふ也此儀に於ては人よりも尚
賢き也人は良医とならんとては三度肱を折てこそなるといへる【注】に
彼等は己れに当る薬性を生得に弁ふる事誠に不思議也
燕は雛の眼にまけあるをみればせりだうにやといふ草を含来て彼が
眼にすり付て治する者也人是を見て彼草の眼薬なる事を弁へ
たり茴香の眼薬となる事をば大蛇より習ふ也又人の身の血を出す
事の薬となる事をばかわろまりいのといふ獣より習ふ也彼に病ひ
ありと思へば竹林に入てきりかぶのとがりたるをもて足より血を出す
者也さて其血を留めんとては泥中に入て針口を塞ぐ也家猪の病
あれば海辺の蟹を服して愈る也亀の毒蛇を喰て煩ふ時は
おれがのといふ草を求てはみたるを見てより人も其草をどくけしの
薬とは知たるぞかんぢやといふ国の山にすむ羊は狩人の矢にあたれば
或草をはみて立たる鏃を抜と也犬も胸の間に痰のふさがりて吐く事を
【枠外右 十四ケ条】
【注 春秋左氏伝に言う、斉の高疆のことば。「三折肱、知為良医」。たびたび自分で肱を折って自分で治療するような痛い経験をして、初めて治療できる良医となれるという意。】